偉大な作家 司馬遼太郎 | PADME

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無念無想の境涯

 

司馬遼太郎氏は私の高校の大先輩にあたり、直木賞、文化勲章を受賞した日本を代表する作家です。司馬氏は大阪大学外国学部蒙古語学科を卒業後、産経新聞記者を経て、歴史小説家として旺盛な活動を本格化させました。

 

坂本龍馬や新選組副長*土方歳三がこれほど有名になったのは、司馬氏の著書『龍馬がゆく』や『燃えよ剣』がベストセラーになったからであり、明智光秀がそれまでの逆賊イメージから、武将としての相対的評価を受けるようになったのも、司馬氏の著書『国盗り物語』に拠る所が大きいと思います。そういう意味で日本人の歴史観を大きく変えた人とも言われています。

 

私は高校生の頃、父に司馬氏の著書を読んで感想を述べた所、国語国文学の教員だった父は司馬氏と交流があり、司馬氏が私の自宅至近の大阪上本町駅より、近鉄線で5駅目の河内小阪に居た事から、興味があるなら司馬氏を紹介しようと何度か誘ってくれました。しかし中学生の頃から政治家を目指していた私は、父に依頼する事なく、結局出会う機会はありませんでした。

 

 『燃えよ剣』は、土方の生涯を描き、テレビドラマ、映画、舞台など様々なメディアで翻案されています。新撰組は、明治維新体制下では逆賊と見なされ、まともに顧みられなかったのが、『燃えよ剣』の登場によって再評価の機運が生まれ、今日に至る迄の人気が決定づけられたのです。以後新撰組にまつわる作品は、本作で作られたイメージに大きな影響を受けています。

 

司馬氏は、自分が主人公に対して持つ共感を読者と主人公の関係に延長し、ストーリーの中に読者を巻きこんでゆく手法をとります。リオ五輪カヌースラローム銅メダルの羽根田卓也氏は、『燃えよ剣』が愛読書で、土方について打算なく筋の通った生き方をして、最後迄自分の信念を貫き通した所に惹かれると述べています。己の道を貫いた生き様がとても心に響きます。

 

辛く苦しい日々は、永遠に続く訳ではありません。どんなことでも変わりゆくものです。そこで辛い時に思い出したい事が、苦しいのは自分だけではないという事です。苦しい時、必ず仲間がいる。そう思えば力が湧いて来ます。司馬氏は土方の生き様を読者に伝え、そう鼓舞している様に思います。