私の弟はけっこう運動神経がいい

小学校の時は足が速くていつも一番か二番だった
統合の大きな中学生に行ってみたら
まったく勝てなくなったらしい
それが三年生になったとき
800メートルで一番になって学校の代表に選ばれた
うれしくて意気揚々と
同じ小学校の仲間のところに報告に行こうとしたら
聞こえてきたのは弟の話をするみんなの声だった

また、アイツの自慢話が始まるぜ

弟の足はそこから動けなくなって
後ずさりして、その場から逃げた

きっと仲間は悔しかったんだよ
優等生で委員長の弟に嫉妬もあった
前後の話も分からない
自慢話をしていたのかもしれない
弟はすごく驚いたんだ

それからは
自分は自慢話をしていないか
ずっと見張っている 
父さんの普通の話でも自慢話に聞こえるらしく
奥歯を噛みしめてザワザワしているのが
手に取るように分かる

自慢話をすると人がイヤがる
彼の法律が出来上がった

私がうつ状態を経験してから
弟とこう言う話ができるようになった
それまでは仕事の話ばかり
ゴリラみたいに肩に力が入っていて
ガンバっている話しか聞かせてくれなかった
きっと私がガンバることにしか興味がなかったんだね
弟に思考ってこんな仕組みらしい、なんて話はしない
ただ彼の思考のクセに私が気がついたってだけ

私は弟の
こんなことがあったよ
って話を聞くのが大好き

一緒に通っていた小学校の運動会出
足手まといな私とは違って、弟はヒーローだった
頑張れたのは足の遅い私がいたからなんだって
「姉ちゃんが、俺がカーブを曲がるときに身体が傾いて
 足が速いのはすごいねって誉めてくれるのが
 すごく嬉しかった」

私がそんな事言ったんだ
そう言えば、今も走る人を見るのが好き走る人