心身ともに体調が悪くなって一週間が過ぎて、良くなるどころか、悪化するのが手に取るように分かった。

眠れない
食べられない
外に出かけたくない
テレビが見たくない
本が読めない

出来ないことがどんどん増えていくのが怖かった。

両親には心身の変化を言わなかった。
結婚もせず家にいて、これ以上の親不孝はしたくない。
だから、今までと同じ生活を続けることに集中した。

このことが、私を助けることになったかもしれない。
私は自分を見張っていなければ、身体の力が全部抜けて、風のように居なくなりそうだった。
両親より先に行ってはいけない、それが支えだった。

眠れないことがイヤなんじゃない。
布団の中で、音がしない長い夜に考えることは、
私は間違った、失敗した、そればかりになることが怖かった。
夜は休む時間ではなくなってしまった。

心療内科に行くことに、躊躇いはなかった。
怖くて仕方なかったから。

最初に訪れたのは、予約の必要のない心療内科。
調子を崩して10日ほど経った時。
先生と向かい合って、「どうしましたか?」と言われた途端に、涙が溢れ出した。
「生まれた時から、人と違うんだから、違った人生を行ってもいいんだよ。上手に今の気持ちを諦めていくんだよ」
先生は、穏やかに微笑みながら言った。
「気持ちが楽になる薬を出すから、それを飲んでまた話に来なさい」

このとき、調子を崩してから初めて、人の前で泣いた。
電話で話して泣いた、何を見ても泣いていたけれど、
人を前にして心が苦しいと、初めて泣けた。

すがるように薬を飲んだ。
嘘のように眠れた。
それなのに、今度は眠りすぎるのではないか、怖くて仕方がなくなってしまった。
猛烈な勢いでネットで薬の情報を集め、その時の自分が求める情報「薬は危険」だけを集めて行った。本当は、効能と副作用、安全性も明記されていたけれど、この時の私の心は、自分の思う通りの「飲まない方がいい」しか目に入れなくなっていた。

薬を飲めなくなり、病院にも行かなくなり、心の思うままに翻弄されつつ、今までと変わらない生活を装う自分を監視し続けた。

もう、どうしていいか、分からなかった。