もうひとつの幻想 5 | Another やまっつぁん小説

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 そういえばキューム・バブルという魔法はハーブが作ったオリジナルの魔法のようだけど、名前も自分で付けたんだろうか?
 グルーモのことからわかるようにハーブは何に対しても安易なネーミングしかできない。
 たとえば私の精霊。


 私は水を操る力を持った精霊を扱えるのだが、私の精霊は人型ではなく、ただの水の塊のように見える。
 それをハーブがあまりにもかわいくないかわいくないと言うので、水の精霊を氷に変化させ、それにインクをたらしてみた。
 すると精霊はそのインクを顔のようにして表情を作ることに成功し、見た目もかわいらしい雪だるまのようになった。
 


 それを見たハーブは私の精霊に「ユッキー」という名前をつけた。
 もう少し何かいい名前はないのかと思ったけれど、それは今に始まったことではない。


 今日は姿を見ないのだが、ハーブは蜂のような姿をした種族「ローピー族」の女性をいつも連れている。
 その、ローピー族は大人になっても手乗りサイズで小さいのだが、彼女との出会いはとても苦いものだった・・・が今は関係ない。


 そのローピー族の彼女の名、それもハーブがつけたのだが、それがなんと「ハニー」である。
 
私もネーミングのセンスがあるとはいえないかもしれないが、さすがにハニーはないんじゃないか。
 そのまますぎやしないか。
 私はハーブがハニーと呼ぶたびに思う。


「ねぇ。・・・ねぇ、ルビー!」
 私はハッと我に帰った。
 見上げると私の顔を覗き込むハーブの顔。


「呪文は?」
「唱え終わったよ!そう言ってるのにそっちが無視するんじゃん!」
「あぁ、・・・ごめん。」
 時たま私は考え事なんかに夢中になると周りが見えなくなることがある。
 今もそんな感じだ。


「そんでさ!魔法は大成功だよ!」
 ハーブはさっきまでのムッとした顔とは打って変わり、満面の笑みを浮かべた。


 見た目はさっき呪文を唱えていたときから変化はない。
 きっとキューム・バブルという魔法の効果は水の中でないと確認できないようだ。


「そんじゃ、見てて!」
 ハーブはそう言うと、私の隣にしゃがみこみ、結構なスピードで後ろへと流れていく海面に、手を突っ込んだ。
 するとどうだろう。
 水しぶきが上がっていて良くは見えなかったが、ハーブの手の周りに空気の層ができている!
 そして、ハーブが海面から手を上げると、手はまったく濡れていなかったのだ。


「どう?これってどう見ても成功でしょ?力抜いても浮く感じはしなかったし、これなら水にはいってもぷかぷか浮かんじゃったりしないはずだよ!」
「ふ~ん。」
 私は少し考え込む。
 魔法はどうやら成功したようだ。
 きちんと水中で息をしながら泳ぐことができそう。


 しかし
「この魔法って一体どれくらいの間持続できるの?」
 と聞いたところでハーブの動きが固まった。
 いつものパターンである。
 そして彼女の動きはしばらく固まったまま。
 どうやら持続時間に関することはまったく考えていなかったご様子。


「まぁ、どうにかなるでしょ。」
 私がため息混じりに言うと、瞬時にハーブの目に光が戻った。
「だよね!!」