岡田武史が語る広州恒大 | 風早のダークで恐ろしい終末論

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岡田武史

2012-2013に中華人民共和国の杭州緑城を率いた岡田武史が広州恒大について語った。


アジア最強チームに宿る規律とプロ意識

■選手のプロ意識の高さがチームを強くする
2013年当時の広州恒大監督はイタリアの代表監督も務めたリッピ氏。ダリオ・コンカ、エウケソン、ムリキという3人の南米出身者の強力攻撃陣と、日本のJリーグでもプレーしていた韓国代表の金英権を軸とした守備陣がゴールを守る。外国人選手の質、中国代表に8人を送り込む中国人選手の層の厚さ。戦力的に見てもアジアのトップレベルであることは間違いない。岡田武史率いる杭州緑城が戦う中国スーパーリーグでは早々と3連覇を決め、もはや向かうところ敵なしの様相だ。ACL決勝戦では韓国のFCソウルに勝利し、広州恒大はACLを制した。


■試合の翌日、朝9時に集合
もちろん、中国人だけのチームだったら、ここまで強くないかもしれない。外国人選手の実力はスーパーリーグでもずばぬけている。ただ、南米出身の3人はディフェンスもこなす。もともと、守備は中国代表選手で固めていて強いから、我が杭州緑城も最後の1対1になると勝てない。

広州恒大がアジア最強といっても過言ではないのだが、メンバーがそろえば、あそこまで強くなるかというと、そういうわけでもない。強さの秘密は中国の中で唯一のプロフェッショナルな意識を持ったチームということだ。年間予算は数百億円。岡田武史率いる杭州緑城の数倍も高いことが動機付けになっている面はもちろんあるだろう。親会社は中国を代表する不動産会社で、試合に勝てば、出場選手はケタ違いの報奨金も得られるというのだから、当然かもしれない。それでも、やはり、広州恒大はプロとしての個々の意識が高く、チームとしての規律が取れている。

先日もこんな場面を見た。スーパーリーグでの杭州緑城と広州恒大の試合翌日。広州恒大の選手たちは朝9時には前日夜の試合に出た選手も含めて集合していた。9時半からの練習も、見た目にもかなりハードな内容。それでも、一人ひとりがきっちりとこなす。ウチのチームだったら、「朝9時集合は早すぎる」などと不満を言う選手も出てくるが、広州恒大はそんなことはないようだ。試合中も、接触プレーの後にむやみに痛がったり、レフェリーに文句を言ったりすることも少ない。一つひとつに甘いプレーがなく、隙がない。

聞けば、広州恒大は練習で手を抜けば、試合に出られなくなるという。(今季からフィジカルコーチとして杭州緑城に加わった)池田誠剛は韓国代表コーチを務めた経緯から、広州恒大のデフェンスで韓国代表の金英権と電話でよく話すのだが、池田があるとき、「どうだ、中国人選手はみんなだらだら練習しているだろう」と聞いたことがあった。すると、金は「とんでもない。みんな韓国人みたいに必死ですよ。練習量、すごいですよ」と話していたそうだ。

中国代表選手がごろごろしているのだから、選手間の競争はそれだけ激烈。親会社自身、実績を残せば、給料も高いが、結果が出なければ、解雇、という厳しいシステムという。そういうシステムがチーム内でも徹底されている気がする。選手からすれば、手を抜くなんてことは考えられない。


■お金の権限を離さないフロント
もちろん、プロなのだから海外ではそうしたチームづくりは当たり前。しかし中国ではそれがなかなかできない。なぜなのか?一つはプロフェッショナルな強化責任者がいないことに原因がある。中国ではチームづくりから運営まですべてが監督任せ。でも、現場にできないことはたくさんある。例えば選手の補強や管理。イングランドのプレミアリーグなどは監督をチームマネジャーと呼び、クラブの中にはお金も含めてすべての権限が任されている例がある。中国ではお金だけはフロントやオーナーが管理しており、現場ができることにも限界が生じてしまうのだ。
 
中国のチームづくりでカギとなるのは人脈だ。以前も書いたが、オープンな移籍マーケットがないから、フロントも選手も人脈を頼るしかない。だが、プロの強化責任者がいたら、そんなことはできないはず。人脈でチームをつくって勝てなかったら、その責任を負わされるのだから。
 
広州恒大にはとにかく、良い選手が集まり、競争意識が高くて、プロとしての自覚を持っている。リッピ氏が広州恒大の監督に就いたのは昨年5月だが、それ以前から、そうした高い意識を持ったチームづくりができていたと思う。中国でも海外と同じようなシステムでのチームづくりができるということだ。もちろん、カネがあることが前提かもしれない。かといって、カネがあれば、できるということでもない。競争原理がうまく働き、それが個々人の選手たちの「よりうまく」「より強く」というプロ意識につながっているところが、広州恒大がアジア最強レベルに到達できた要因だろう。


■ネジ巻き直し最後の奮闘
リッピ氏(広州恒大監督)の存在も大きい。彼の戦術はオーソドックスだが、戦況を見極めて打つ手が早い。例えば、相手の戦い方によって、守りのポジションを少し変える。その判断が早い。それでいて、リッピ氏はとても慎重な人だ。ACLの準決勝第1戦で4-1で柏に勝った後、リッピ氏に「もう大丈夫だね」と言ったら、「(柏と準決勝第2戦を戦っても決勝に進む)可能性は高い。だけど、サッカーは何が起こるか分からない。オカダも知っているだろ」と返された。そういうサッカーの厳しさをチームに植え付け、共有しているのだろう。

広州恒大




広州恒大年度別成績


広州恒大最新情報

広州恒大からバルセロナに移籍したMFパウリーニョは、入団会見でバルセロナのスタイルにフィットできると自信をのぞかせた。

バルセロナは4000万ユーロ(約52億円)で中国で活躍していたパウリーニョを獲得し、4年契約を結んだ。トットナムでインパクトを残せなかった同選手の獲得には多くの疑問の声が上がっていたが、欧州に再挑戦するブラジル代表MFはその批判を覆せると考えている。

パウリーニョは、カンプ・ノウで行われた入団会見で「バルセロナで問題なくプレーできると確信している。クラブが僕を獲得するために費やした努力は無駄ではない。バルセロナは独自のスタイルとDNAを持っているが、僕はここでプレーできる。チームが多くのトロフィーを獲得できるために貢献したい」と意気込みを述べた。

また、広州でAFCチャンピオンズリーグを含む6つのメジャートロフィーを獲得するなどの活躍を見せたパウリーニョは、中国でプレーしたことが自信の回復につながり、バルセロナ移籍を実現できたと考えている。

パウリーニョは「トットナムでの2シーズン目は思い通りにいかなかった。しかし中国からのオファーを受け入れ、そこで自信をつかことができて、数々のタイトルを獲得した。僕はバルセロナに“ノー”とは言えなかった」と移籍が実現した喜びを語った。