「ミホりん、何問解けた?」

頼もしい光歩の女友達。そのうちの黒縁メガネが浮いている一人が詰め寄る。メガネの奥の優しい瞳。

「ったく!そんなに留年したいの?んなわけないよね?毎日ヤケに早く帰るから、塾でも行ってるのかと思ってた。」

小室優子という女の子は、少しお節介なのが時にはウザいが、光歩はテストの度に助けられている。今回もそうだ。

「えへへ、ちょっと。」

「何?何?知りたい!ミホりんと私の仲ではないか?言ってみ、言ってみ。あ!」

担任の渡辺が二人に歩み寄る。

「小西。お前は余程掃除が好きなようだな。まあ、父子家庭だから大変なのは解るが、こう毎日じゃ私も庇いきれん。明日こそ遅刻するな。いいか!」

「はい。」

渡辺が去るやいなや、放課後のチャイムが鳴った。

「ね。ミホりん。お母さんのこと覚えてる?」

光歩と優子は、その日は共に教室を後にした。

「う〜ん。3歳だったからボンヤリとしか。」

「交通事故…だったのよね?」

「パパが言うには、トラックに轢かれそうな子供を助けようとして…打ち所が悪かったらしいよ。綺麗な死に顔だったって、今でも泣きながら言うし。21歳で死ぬってどうよ?美人薄命ってか?」

「学生結婚だったんしょ?ラブラブじゃん。」

「ママは高3、パパは20歳で大学生でよ。信じらんないよ。しかもできちゃった婚てやつ。」

「その子がミホりんか!ご両親の最高傑作だね!」

「何が最高傑作なもんか。あの人、娘がいるの隠してるのよ、ムカつくし。」

その時、二人の前に大勢の男子が待ち構えていた。

「ああ、またか。」

優子が頭を抱えた。