心理学入門(4)うつ病と歴史的文化的格差、家族支援と孤立化、生物学的仮説と社会学的仮説

 

(訳注)うつ病の諸理論とその治療法を語っている。特にうつ病は時代的格差や文化的格差、さらに性差など様々な格差がある。歴史的には家族構成の変化により大家族による家族支援があった時代と現代の孤立化した核家族の時代にはその発生に大きな差がある。さらに現代は循環器系疾患や、免疫疾患など死へ結びつく恐怖が精神的ストレスとなることが多い。さらに思春期前後からの男女の格差が1対2という圧倒的差としてうつ病歴は成人期まで続いている。その背景を説明する生物学的仮説と社会学的仮説があり。前者は一定のホルモンが関係し後者は女性に対する虐待が原因とされている。治療法も生物学リリン、認知行動理論、対人関係論など多岐に分かれている。遺伝子質が明確なのは双極性障害だけでその家系の60%が発症すると言われている。今現在は遺伝子の関与は双極性障害以外は極めて限定的になっている。かなり明確になってきたのは「初期開始うつ病」と呼ばれる早期のうつ病体験が、神経伝達物質のセロトニンなどの運搬遺伝子の一部に変異を起こし神経受容体の機能不全を起こしそのアレル対立遺伝子の少数に変異を伝えこれが思春期前後から複写されて本格的なうつ病に発展することまでは分かってきた。しかし従来から言われてきた全面的な遺伝子構成要因はこの気分障害には関係はない。

 

 

 

ここでいわゆるうつ病の別の統計をおみせします。これはただうつ病だけに適用されるものです。大きな年齢格差がうつ病の流行にはある。これは15歳から55歳までの全国民規模の研究のうつ病のデータであり、ここにあるのはその研究の人々のパーセントである。数千人の人がこの研究には参加したが、その人はうつ病の治療を求めてきた人ではなく無作為にそれぞれの地域のサンプルになった人の数である。これは過去数か月でうつ病の兆候を見た人々のパーセントである。見て分かるように15歳から24歳までのレンジが最も高い割合で(3104)そこからある程度は下がって35歳から44歳代がまた高くなっている。国の統計では成人の主要なうつ病が実際には低い年齢であることを知って驚くかも知れない。しかしそれは80台から85歳代まであることは真実で、その議論はなぜこの事例に関心があるかと言うことである。

 

ある人は歳をとるとだんだん賢くなりそれが原因で老齢のうつ病の割合が低くなると言っている。また他の人は現代の若い層の人、皆さんの年齢層は祖父母の年齢層や他の年齢層に比べてうつ病になりやすく、その一つが社会的支援としての家族や親族の支援が受けやすかったという歴史的変化や他にも数多くの文化的歴史的変化があったからだと言われている。他にも別の面からの議論がある。(3206)それはうつ病は心臓血管性の病気や心臓発作や免疫疾患の病気が高い割合で伴ってすべての人が死ぬ病気の主役が伴って人生の長い歴史を持つ人への精神的健康面への負のストレスとなって若い人が早く死ぬ傾向が強いことが知られている。だから老齢者になると割合が低いと言われている。まだそれが真実かどうかはわかっていないが、ある程度は真実かもしれない。また性差によるうつ病の差もある。

 

このスライドのデータは数多くの子供たちと思春期の研究データを編集したもので、見ての通り本格的なうつ病ではないが自己質問によるうつ病のレベル調査である。多分皆さんのほとんどがBeckうつ病調査のような、先月にこんな質問にどう感じてきたかのような質問に答えたことがあるのではないか。(3304)これが子供バージョンのもので、これら数千人の子供のデータから編集したものである。見て分かるように13歳以前は男女ともに同じようなレベルでうつ病のデータが出ている。しかし思春期の初めごろから女子のうつ病割合が極めて劇的に上昇し男子は同じレベルを維持していることが分かる。18歳から20歳代までにはほとんど2対1の割合でうつ病の女子とうつ病の男子の割合が続いている。残りの成人年齢層も同じである。これが真実なのはなぜか多くの仮説が立てられている。(3338)それは生物学的仮説としてホルモンが関係しているからである。また社会学的仮説とし一種のストレスと特に男子に比して女子の虐待が考えられる。正確にはなぜかは分からないが多分これらのことが一緒になってこの大きな2対1と言う割合になっていると考えられる。(3400)

 

そこでちょっとこの気分障害の主要な理論と治療法についてお話します。生物学的理論と治療法ですがそれは認知行動理論とその治療法として知られそこから対人関係理論と治療法に向かいます。このそれぞれの例をご紹介します。まず最初は遺伝性です。気分障害には遺伝子が関係していることが極めて明らかで、特に双極性障害はそうです。双極性障害には確固とした証拠がある。いくつもの道があるが遺伝子研究について聞いたことがありますか。例として双子の障害と家系の研究について知っていますね。これは実際にいくつかのグループ研究を再編したものです。双子の研究を見てみると一卵性双生児では対象となる双生児が双極性障害のになる場合は60%を超すと言われています。対照的に(3504)二卵性以上の人ではその障害を持つ割合は12%です。この大きな違いが確固たる証拠になってこの障害の伝染には遺伝子構成要素が関係しているとされています。同じように双極性障害を持つ人との生物学的関係から離れれば離れるほどその障害とリスクの割合は低くなります。2親等の親族に双極性障害を持つ人が障害になる割合はわずか2%です。かろうじて1%と言われる一般的な人の障害の割合の上になる程度です。

 

非常に明らかなことは双極性障害はそこに遺伝子的構成要因があることです。うつ病だけで、主要なうつ病の場合(3603)にも強力な遺伝子構成要因が他よりもあることは確かです。特に最初の兆候が子供のころや思春期の早い時期に始まった「初期開始うつ病」と呼ばれる人はうつ病の形が強い遺伝子構成要因を持っているように見える。その一方で人生の主要なイベントがトラウマや喪失をきっかけでうつ病を持つ人は明らかに遺伝子構成要因とのつながりは少ない。また多くの神経伝達物質が気分障害には関係してきた。神経伝達物質のクラスでしばしば研究されてきたのはモノアミンと呼ばれる物質です。セロトニンとうつ病の関係は聞いたことがあると思います。他にも2つのモノアミンがある。(3658)副腎皮質ホルモンとドーパミンでこの双方とも気分障害の双極性障害とうつ病の二つにリンクしている。(3701)かってはうつ病の人はこれらの神経伝達物質特に十分なセロトニンを脳内にその機能を通常に保つために十分に持っていないと考えられてきた。

 

しかし今は神経伝達物質の役割に関する理論はこれらの神経伝達物質とその機能はもっと神経受容体、レセプターに関係しているとされている。その概念はセロトニンのような神経伝達物質に対して受容体は有効に機能していないというものである。脳内のシナプスに十分な化学物質があってもレセプターが適切に機能しないのでニューロンが上手く使えないことである。うつ病を軽減する薬剤はこれらの神経伝達物質の機能を改善する働きをしている。(3802)現在進行中の興味深い神経伝達物機能の遺伝子的資質とストレスの交点を探る研究がある。我々Yaleのところには世界のエキスパートの独りである、Julia Kim Cohenが去年から参加しています。最近にもいくつかの素晴らしい研究が出ています。他にも精神医学の分野ではJoan Kaufmanがこの研究の一部を行っています。最近のいくつかの研究で見つかったのは一定のセロトニンの運搬遺伝子の変異や多異性の存在がストレスに直面すると抑圧されることが予言されている。古典的研究がAvshalom Caspiとその仲間によって行われ彼らはそこに短いアレル対立遺伝子と呼ばれるものが1,2つセロトニンの運搬遺伝子にあることを発見した。

 

これが特定のセロトニンの運搬遺伝子のうちに1つか2つの短いアレル対立遺伝子がストレスに直面すると変異しうつ病を発展させる傾向があると考えられた。しかしまだ詳細な研究をすることが重要である。実際にはこの遺伝子を持つ人で問題の無かった人々や虐待のような重要なストレスを受けても問題の無かった人々、ストレスに直面しなかった人や、うつ症がなかった人がどんなセロトニンの遺伝子を持っていたかを調べなければならない。さらに短い対立遺伝子アレルが1つか2つかを持つ人が子供のころに虐待を受けたら、人生の中でいつかもっと多くのうつ病になる可能性がある。これが他のサンプルや重要なトラウマとともに複製されてきた。基本的にこの話は(4002)遺伝子の資質と重要なストレスとの交点がある人には本格的なうつ病を発生させるというものです。つまりすべての遺伝子資質がすべてのうつ病の原因になるわけではない。しかしこのセロトニンの発見は今4つの異なった研究に生かされています。かなり重要信頼できるな影響があったということです。繰り返しますが遺伝子が障害を決定しているのではないが、遺伝子とストレスの交点がこの障害の重要なリスク要因になっている。