心理学入門(4)人種差別と黒人と白人の無意識テスト、Trish Devineの自動能の起動と意識的行動、affirmative actionと無意識テスト

 

(訳注)ステレオタイプ問題の最後を無意識テストの実験で説明している。人種差別を中心にそのステレオタイプの認識がいかに深層心理に根差したものかを無意識テストという方法で無意識下の意識をのぞいている。黒人と白人の他にポジティブな単語とネガティブな単語を選択的にスクリーンに提示して瞬間的に答えさせることでその反応時間を測定している。結果的には白人はポジティブに黒人はネガティブに反応しその反応時間はわずか半秒の差がついただけだが、同じような実験を何万回も繰り返すとその潜在意識が見えてくる。この無意識テストから見えたそれぞれ白人と黒人の反応バイアスは否定できないものになった。それをTrish Devineの「自動能」と呼びこれは白人黒人いずれかに個人的に接触すると無意識下で自動的に起動する。これは意識的に制御するには一定の努力が必要だが可能ではある。しかし白人警官の黒人への暴力行為を見ると現実社会ではその行動は制御が難しい。アメリカではこの人種差別だけではなく性差別も含めてaffirmative actionと言う格差是正措置が取られている。システム的に差別を起こしにくくするもので、男女を明記しないことや人種を明記しないなど様々な工夫がされている。ステレオタイプの問題はまさに深層心理の問題でもある。

 

 

 

 

被験者の黒人の顔を見た時この単語は「hostile敵意」として最も多くを占める。その一方で白人の顔の場合には「hospital病院」が多くを占める。今から無意識の意識の実験を始めようと思う。この実験はかってYale に在籍し今はボストン大学にいるMahzarin Banajiによって開発されたものである。この実験は無意識の意識テストと呼ばれている。これは人間に対する最大の心理学の実験だと言われている。数百万の人々が参加してオンラインでimplicit.harvard.eduにアクセスすればだれでもいつでも参加できる。しかし今ここではグループ単位でやってみよう。実験室やパソコンでやる場合にはボタンを押すだけです。我々はこれを口でやってみます。(2800)このスライドであるものを見せますがそれは単語だったり絵だったりします。それがアフリカ系アメリカ人や悪い言葉やネガティブな単語だったら、こちら側の人は「right」と叫んでください。それがアメリカ白人や良い言葉だったら「left」と叫んでください。準備はいいですか。誤りがないようにできるだけ早く叫んでください。悪い人が大きな声で叫ぶのでもう一度やってください。

 

これは「congruent適合」と呼ばれるもので黒人と白人では白人が黒人を越える支持のバイアスがかかるという理論に適合している。どうしたらこれを知ることができるか。それを知るには比較すればよい。それが「congruent」と呼ばれる。(2913)では代えてみます。それが白人や悪い言葉なら「right」と叫んでください。それが黒人や良い言葉なら「left」と叫んでください。皆さんはどちらも上手くやれたが実験は何千回も何万回も行われ皆さん個人でもやってみると面白い。これが一つの方法ではなくまた別の異なったものを提示して見たりしている。結局このバージョンは他のバージョンより人々の答えはゆっくりとなることが分かり、その結果は相互にある方向にシフトしていることが分かった。この作業はさらに別の方法にも拡張され、例えば性差を見るのに女性と英語や男性と数学に年齢を見るのや肥満の人と痩せた人の意識や普通の人とゲイの人の意識などを見るようになった。オンラインでこの研究を見ればある程度感覚的に無意識の意識が我々の中にあることが分かると思う。(3034)

 

適切な質問は「どう違うか」だろう。研究の結果を見れば結局ある種のバイアスのかかった見方が関連して白人はポジティブに黒人はネガティブに反応することがわずかだが半秒の違いに現れる。ここには二つの答えがある。一つの答えは(3100)人生時間の中で半秒の差は大きな問題である。警察官に誰を撃つかを瞬間的に選択する反応時間を使って測ると、不明な対象者を捕まえた時に典型的な意識がどちらを撃つのか大きな役割を果たす。さらに一般的にはこの無意識の意識テストでは審判の判定に大きな役割を果たしている。意思決定が難しい場合の人種主義者ではない人でも明確な差別主義者ではない人でもこの議論はこれらのステレオタイプがあらゆる場面で影響を与えると言っている。一つの例を上げると、誰かがトラブルに巻き込まれた時、黒人か白人かどちらかが外から叫ぶ声が聞こえたとき(3201)一つの条件は君がその周辺に一人しかいない場合ともう一つの条件は他にも周辺に人がいた場合である。「傍観者効果」の研究から分かっているのは一般的にどちらが助けに行く可能性が高いか。一人か複数か。一人の場合だ。一人の場合には助けを求めている人の色にかかわらず助けに行く。しかし他にも人がいる場合は大きな違いがでる。この実験はKKKのメンバーではない人を対象にしている。この実験は普通の大学の学部生を対象に行ったものである。もしこのグループの中に入れば「助けようとしなかったのは黒人だったからだ」とは誰も言わないだろう。むしろ「助ける価値がないとは考えないが、周りにいるだれかが助けるだろうと考えた」と言うだろう。(3301)しかしこの違いを見ると本当の違いが現実的にはあることが分かる。

 

最後の研究は私の仲間でJack Dovidioした研究である。いかに人は誰かを推薦に基づいて雇うかを見たものである。これはちょっと複雑なものである。緑の棒がアフリカ系アメリカ人、青い棒がアメリカ系白人である。あるケースの場合この人たちの場合は強力な推薦状を持っていた。強力な推薦状を持っていた場合1989年では誰でも積極的に採用した。この二つには大きな差はなかった。推薦状がそこそこの場合審判の判定では被験者は大きく黒人より白人に集中した。1989年はずいぶん昔であるが同じ結果が1999年でも出ている。同じ結果が1年半前にも出ている。(3400)繰り返しになるがこの人たちは極端な差別主義者ではない。ここに現れているのは人々が持っているステレオタイプが現実世界の行動の違いを作っていることである。これらのすべてを一緒にしてTrish Devineの自動能理論という。この考え方は誰でもステレオタイプは持っている。これが個人的に接触すると自動的に起動する。

 

このステレオタイプの事実に沿って行動しないようにするために、我々は意識的にそのレベルを押し下げ、意識的に優先しなければならないし、それは可能である。しかしそのためには努力が必要である。個人のレベルでもグループのレベルでも努力しなければならない。以上の件で何か質問や考えはあるか。良い質問だ。これらの結果は個人のレベルでも集団のレベルでも驚き(3507)であり困惑させるものだが、今質問した若人は私にもっと明確に挑戦してきた。一つの例を挙げよう。我々には就職課がある。この就職調査の担当者は教員仲間を含めて部屋の中で座って、名前を書きだしている。我々もこの名前をさらなる討議の中で使っている。「あいつが素晴らしい、良い仕事ができるだろう」心理学部門では不利な集団から名前を引き出そうと特別なポイントを提示している。Affirmative action差別是正措置行動の見地からだけではなく、むしろその人々が才能が十分にあるのに一定の手続きを経ないと指に入ってこない多くの証拠があるからである。

 

更にまた別の例もある。(3605)多くの記事がブラインドレビューされているが、私が性差別のステレオタイプにつて話したとき、男性名や女性名が何かの違いを作るかどうかの証拠になった。これらはグループレベルで偏見を持ってはならないというよりむしろ偏見が働かないようなシステムを作ろうとしている。例えばブラインドオーディションなどがぴったりの例だろう。個人レベルでは君の質問は我々に何ができるか難しく私にも確信は持てないが、我々がすべきはこれらのことを意識的にすることで「私は明確な差別主義者ではないから誰とでも握手する」というだけではなく、我々には越えがたいバイアスが働いていることを認識し必要以上に修正するのではなく、何か関心があったら例えば資格証明だったらそのシステムが人種や性の認識なしに働くかどうかを検証することである。(3701)これもよい質問だ。

 

どれだけがステレオタイプによるか、どれだけが自分のグループのバイアスによるか。私が説明した実験はある程度その問題が不明確である。アメリカ白人がアメリカ黒人よりアメリカ白人を支持するのはステレオタイプだけではなくグループ内のえこひいきでもある。答えはその両方が働いているがある影響はえこひいきよりもステレオタイプによるものであると思う。なぜそれが分かるかと言うと「無意識テスト」と言うものがあるからだろう。アフリカ系アメリカ人もアメリカ白人と同じような結果を示しているからだ。アフリカ系アメリカ人もまた同じようなバイアスを持っている。だからと言ってグループの依怙贔屓の影響を減らしているのではない。(3810)