心理学入門(7)  養育の仮説と親の問題、親の苦悩の伝承と子供の心の傷

 

(訳注)今週は人間の違いについて説明してきたが、最後に親子の類似性の話をしている。ニューズウイークはIQ問題に関連して、親子の共有環境を「親の問題か」というタイトルで特集した。そこにJudith Harrisと言うハーバード卒の心理学者が「養育の仮説」と言う本を出した。そのサブタイトルでは、「子の逝く道は、多くは親の養育の問題であり、後になってその影響が出る」と警告した。この書はハーバード大のGeorge Miller心理学賞を受賞して有名になった。その内容はPhilip Larkinの有名な詩の一説に深く関係している。「君のパパやママは君をダメにした。彼らはそのつもりはないが、しかしそうした。彼らは彼らの失敗で君たちを満たした」。その最後の一節は「人は人に苦悩を伝える。それが海岸の段丘を深く削る。できるだけ早く自分の子供から逃げ出そうと」で終わっている。この問題は我が国では不登校の問題と重なっているように見える。特に親が子供に向かって「愚痴」をこぼす、これが子供の心のトラウマになって不安を増殖し不登校になっていくのではないか。一つの仮説だが、現場を目撃していないので体験で語るしかない。この親と子の相関関係、環境共有と遺伝子共有が不安の連鎖を生む。同じことが暴力の連鎖として語られているが、この不安の連鎖もその因果関係を科学的に分別することは難しいと言っている。

 

 

 

さてそこに含まれる意味を考えるとこれが議論になり、ニューズウイークは大きな問題としてとらえて、そのタイトルを「両親の問題か?」とした。問題は親は共有環境である。共有環境とは人の知性や個性に影響しない。ということはいかに親が育てたかは人の遺伝子や知性や個性に影響しない。だからと言ってこれは親が人の知性や個性に大きな影響を与えないとは言ってはいない。(5605)人の親はその子の知性や個性に大きな影響を持つ。実際に約半分は影響している。それらは概念的な効果を持ち、そこから彼らは人を形作るわずかな役割しか持っていない。ニューズウイークが巻き起こしたこの事件はJudith Harrisの「養育の仮説」という「なぜ子供は彼らの道を行くかは、人が考えるよりも親の問題であり、その問題が後でもっと出る」という非常に長いサブタイトルがついた本によって大きな議論が巻き起こった。

 

Judith Harrisは面白い経歴の持ち主で、彼女はハーバード卒業を蹴ったが多くは語らなかった。部長のGeorge Millerに手紙を書いて人に多くを語ろうとはしなかった。1997年彼女はその素晴らしい業績でGeorge Miller賞を獲得した。彼女が本を書いたとき初めてスタート台に立った。彼女の意見対立のポイントは君たちがすでに聞いたかもしれないがPhilip Larkinの有名な詩(5708)だった。その詩は、君のパパやママは君をダメにした。彼らはそのつもりはないが、しかしそうした。彼らは彼らの失敗で君たちを満たし、さらに特別なものだけを加えた」詩の最後の一行は、ちょっと詩的に終わっている。「人は人に苦悩を伝える。それが海岸の段丘を深く削る。できるだけ早く自分の子供から逃げ出そうと」Harrisは反論を書いた。「蛇の歯よりいかに鋭くこれを聞いた子供たちをダメにしたか」これはFairではなく真実でもない。彼がダメにしたのは我々ではない」アカデミックな議論はまだ終わっていない

 

イギリスの精神分析家でOliver JamesはHarrisの本に怒って(5802)これに対して「彼らがダメにした」という別の本を書いた。君たちのお爺さんやお婆さんにどう話すだろう。これは間違いないということに注意を払えば、共有環境に当然影響があるに違いないと考えなければならない。もちろん両親は影響を持つ。結局良い子は良い親を持つ。全く疑いのない事実であり真実である。親と子はあらゆることに高い相関関係がある。親が読書家で多くの本を読めば家には多くの本があり、子供は読書家になる。親が信仰心が篤ければその子も信仰心が深い。俺たちに明日はないやつに育てられれば若いごろつきになる。親が貧乏なら子も貧乏になりがちである。(5902)親が優秀なら子供も優秀になりがちである。疑う余地はない。これは非常に堅固な相関関係である。しかし問題はこの相関関係について異なった説明がなされていることである。誰もが考えるのは親が子供たちに影響する何かをしているからだろう。

 

親が本好きなら彼らが子供に読み聞かせると彼らも本好きになる。しかし我々が真実だと知っている、ほとんどすべての親は子と遺伝子を共有している別の可能性がある。他の可能性としては親の影響を受けた子供と子供の影響を受けた親は逆ではない。これらの違いを描いて少し研究の話をしたい。私はこの素晴らしい研究を見出した。これは昨年報告されたものでこの研究が示したのは家庭の食事が十代の喫煙や飲酒やドラッグの使用を避けることに役立つというものである。(6003)これには十代とその親に対して電話質問が関与して、十代に「君はドラッグをやるのか」Yes「夕食は親と一緒か」No、そこで電話を切って次に別の人に次から次へと電話をした。その結果分かったことは、良い子は夕食を親と一緒に取っていることで、この表題を支持した。私はこの研究が好きだが今まで読んできた数千もの研究の中で科学的には最悪の研究だった。この研究が何故最悪なのか一週間かけて検討してみた。その考え方を要約すると、彼らが正しいという可能性はある。実際に可能性はあるがそれに対抗する証拠がない

 

つまり子供を良い子にするために、ドラッグを使わないために、乱交をしないために飲酒をしないために、夕食を子供と一緒に食べる。もちろん(6104)これは他の方法でも同じように可能性はある。もしちびのJohnnyが喫煙場所で売春婦と浮かれさわいでいたら、彼は夕食を家族と一緒に食べるために家には帰らないだろう。これが他の場合である。一方で彼が良い子ならもっと家族と一緒に夕食を取るだろう。方向性としてはこれは家族と夕食を取ることが良い子を作るのではなく、むしろ良い子が他にベターなことがないからパパやママと一緒に夕食を食べているのではないか。他の可能性としては家族には良い家族と悪い家族がある。良い家族は薬とは無縁の夕食を家族と一緒にする子供の家だ。悪い家族はシャブ付けの夕食を家族としない家である。その影響は両親は家族と夕食をとることとは無関係ではないか。彼らは年代を要素から外さなかった。彼らの標本は12歳から17歳(6205)だが、ここで12歳について話してみよう。12歳の子はドラッグをやる子は少ないし家族と一緒に食事をする子は多い。17歳の子はいつもドラッグ漬けになって、家族と一緒に夕食を食べる子は少ない。

 

この研究を見始めたばかりだが、ポイントはこういったことを聞いて何か信じるものがあるかだろう。多分子供に本を読んで上げる家族は、子供にとって良い家族だろう。多分こうした批判がこの研究には適用されるべきだろう。本好きの子はその親が彼に本を読んであげたからだろう。良い家族は一般的には良い両親は多かれ少なかれその子供には良いことをするだろう。良いことは別問題である。他の事例を見てみよう。

 

いわゆる暴力の循環である。これは正しい。親が子供を殴れば統計的には多くの子供は暴力的になる。(6301)しかし因果関係は他にあるのかもしれない。トラブルメイカーの子供を持てば子供を殴ることが多い。多分暴力的傾向としてはある程度は遺伝性があるのかもしれない。たとえ子供が親に殴られて育たなくても、いわゆる親の特性が子に影響して暴力的性向が子によって受け継がれたのかもしれない。この例は君たちに全く合わないかもしれない。昨年同じ講義をしたとき、生徒が私のところにきて「私はママとパパが大きく私の人生に大きな影響を与えていることを知っている。だから私は非常に幸せと成功を感じている」と言った。また別の生徒は「だから私は非常に不幸でねじけてしまった」しかしいずれにしてもパパとママを非難しても、感謝してもその影響は変わらない。君たちは知っていると考えているが、君たちが有名になったり賞を受賞したりした時、多分パパやママに感謝するだろう。君たちが治療専門家のところに行ったとき(6400)なぜこんなにねじけてしまったのかを説明してパパのことを非難するだろう。「彼は決して野球に連れて行ってくれなかった。」しかし多分君たちは養子にもらわれたのかそうではないのかは知らない。如何に君たちの親が君たちを混乱させたかその会話を始めることすらできないが、君たちは多くが両親に似ているのはその遺伝子を共有しているからである。

 

もちろん君たちは両親に似ている。さらに言えば、いかにどっちが原因でどっちが結果化を説明できるだろうか。「ママが私をよく殴った。だから私は結局こんな悪い人間になった。」多分彼女が殴ったのは君が態度が悪かったからだろう。いずれにしてもこういったことを別々に分けるのは難しい。最後のポイントはHarrisの本に対する反応の一つはこうである。「たとえこれが真実だったとしても、人はそこから逃げられない。それはたとえ両親が彼らの個性を形にはめて作らなかったにしても、多分なぜその子供を素晴らしく扱はなかったのか。多分このことを疑ってかからなければならない。君たちは、いかに子供たちを育てるかに何の影響がなかったにしても、どうして上手く育てなかったのかと考えている。しかし答えは、上手くやって欲しかったにしてもそれは君たちを愛していたからである。幸せになって欲しかったからである。良き関係を保ちたかったからである。