心理学入門:Yale Open Courses

Dr. Paul Bloom

 

1.  Introduction

 

(訳注)2023年下半期は、従来の西洋文明を中心とした哲学、歴史、社会科学、経済学から少し離れて、わが国にもある「心理学」をテーマにしたい。確かに心理学は我が国のどの大学でも講義の対象となってきたが、西洋のそれとはかなりかけ離れた人文科学分野の学問として独自に発展してきたように見える。しかしリベラルアーツとしてはその独自性が学問の国際的進化についてゆけない事情が生じている。さらに困ったことに文科系の出身者が多くを占めるいわゆる有識者にはその違いが理解できずに、いわゆる私小説的心理学が主流となり、科学的心理学が疎外されているきらいがある。関連分野で最近幅を利かせているのがいわゆる「脳科学」である。確かにBloom教授も心理学の入門の第一歩に「脳」の話をしているが、それは脳の働きの研究が心理学の重要なテーマとなっているからで、脳の科学では何の意味か分からない。科学をつければ何でも科学になると云う安易な発想が世界に類のない「脳科学」を生んだ。

 

 教授はあくまで心理学の立場から、伝統的な心理学が5つの分野に分かれて最先端の研究を進めているとしている。第1が神経科学で脳神経科学という場合もある。第2が認知科学で認知神経科学という場合もある。第3が社会心理学、集団心理学という場合もある。第4が発達心理学で子供たちの後天的な言語獲得や成長を研究する分野である。そして第5が臨床心理学でわが国では今でもこの分野が主力になっているようである。そしてさらに隣接科学として経済学、ゲームの理論、はこの心理学研究の重要なツールを提供している。

 

 

心理学入門へようこそ、私はPaul Bloomと言います。このコースの教授をしています。もしまだ講義概要を受け取っていなかったら教室の前に置いてあるので受け取ってください。受け取っていない人は手を挙げてくれれば助手が持ってゆきます。講義概要はまたWebサイトにも載せてあります。このウエブサイトはこのクラスを選択をするときに益々重要になってきました。そこには時々前もって更新をする講義概要も載せてあります。そしてまた私がプレゼンしたスライドのコピーや試験問題、作文問題の詳細、含むクラスの資料がこのサイトにはあります(0102)従ってこのウエブサイトをいつも使う必要があるので、今日のコースでもいつも参照してください。今日のクラスは短時間のクラスで、私がしたいのはこのコースについてのオリエンテーションで、今はショッピング期間中ですから、このコースをとったらどんないいことがあるかを、このクラスのスタイルで課題書の評価をしてみたいと思います。そしていくつかの特定のトピックスの事例を提示してみたいと思います。

 

スタートをする前にいくつか指摘しておきたいポイントを上げるのがこのクラスの特徴かと思います。このクラスはビデオ化されて、このコースもYale 大学公開講座に選ばれた7つのコースの一つでビデオ講義の教育資料となっています。その意味は一年たった時にこのビデオが無料でインターネットに載せられ誰にでも公開されます。そして理想的には普段は大学教育にアクセスできない異なった国々の人々にアクセスできるようにしようとすることです。私にはYaleの資源となることは大変名誉なことでありまたYale の計画が世界の優位にたつことも名誉なことである。それはYale 大学のメディアセンター主導から生産チームがすべてのクラスをビデオ化しようと現在その途上にある。その考えはできる限り人目につかない形でクラス体験も同じようにそれがないかのように進行することである。彼等の講義のビデオ化の意図は私が時にスライドを使っても君たちの声や顔はビデオ化しないようにする。だから君たちのサインは承諾は求めていない。二つあるが一つは個人的に私自身が子供たちが見ているから不敬な言葉を使わないように自覚することである。(0306)他にも別の複雑さがあって、前列最前席と第二列と第三列は君たちの頭や髪が背中が場合によっては顔が映るかもしれないが、証拠保全プログラムに入っていれば、あるいは何かの逃亡者ならどうぞそれらの席には座らないでください。人目に付きたくないなら席を後ろに移動してください。じゃー行きましょう。

 

このコースの心理学入門に御出でいただいて感謝します。私の名前はPaul Bloomでこのコースの教授をしています。このスライドにあるように包括的な人間心理研究の入門です。人間心理の研究では非常に広範囲のトピックをカバーするつもりです。中には脳のトピックを含み(0402)子供と言語、性、記憶、狂気、嫌悪、人種差別、愛、その他などです。また男性と女性の違いや動物が言語を習得できるかどうか、また何が人を怒らせるか、なぜ誰かは食べすぎるのかそれを止められるかという問題について適切な説明お話しするつもりです。さらに人々は集団的狂気に陥るか、子供時代の記憶を信じるかどうかの研究、なぜ人はうつ状態になるのに他の人はならないかの研究、週二日の講義のスタイルと同時に課題書のクラスもあります。さてこのコースで成果を上げるには、講義とクラスの両方に出席しなければなりません。時には重複している場合もありますし、時には講義が課題書と密接につながっている場合もあります。しかし課題書のあるパートは講義では見当たらないこともあります。しかしある講義ではそのすべてが課題書にはない場合もあります。(0506)つまりこのコースを適切に追求するうえでは両者ともしなければなりません。その意味はもしクラスをミスしたら記録しておいてその内容を友人や隣の席の人から聞くようにしなければなりません。

 

スライドはオンラインで見ることもできます。従って書き写す必要はありません。どのような方法でノートをとるのは構いませんがスライドに関してはその必要性はありません。白黒で印刷することもできます。しかし、出席に関してはスライドは出席の代わりにはなりません。教科書はPeter Grayの心理学第5編を使います。他に短い課題書の選集があり、Gary Marcus編のNorton Readerもあります。教科書も選集も素晴らしいもので、両方ともYork Streetにある学内の書店のLabyrinthかオンラインで手に入ります。(0605)前回まではこのコースではMarcus Readerを使っていましたがMarvin Chun教授が彼のコースでは前期にPeter Grayの第5編を教科書として使ったことを教えてくれました。多くのコピーがあふれている中で使用されたようです。それらを使ってみたかったらどうぞ自由にやって下さい。点数評価は次のようです。中間試験と最終試験があります。期末試験は試験期間には含まれません。理由は夏季休暇を取りたいからです。それでクラスの最終日にこれを行います。試験は複数選択と短文解答それに穴埋めなどです。試験に先立って前回の試験をオンラインにのせます。何か感じでもつかめればよいと思います。

 

そしてまたレビューセッションもあります。第三週のスタートの最初の月曜日に簡単な質問や質問集を出します。それに応えて答えをあらかじめ決めた助手に金曜日までに送ってください。(0712)これは難しいものではありません。5分や10分もかかりません。しかしポイントの質問には20分ぐらいはかかるでしょう。ポイントの質問は皆さんに資料や課題書に関連付けてもらいたいからです。これらの問題が合格非合格の分かれ目となるものです。全員がパスするように期待していますが正しい軌道を保つかどうかです。ブックレビューもあります。クラスの終わりごろに向けて短文のレビューがあります。学期の中でその詳細は伝えます。そしてまた試験的参加の要請もあり来週に記述を要する1,2枚のペーパーを配ります。この要請は実際に見た心理学的研究の経験と同時に我々の実験には数百の課題があることがわかります。(0803)問題は時々コースでどううまくやれるかに現れます。どううまくやるか、すべてのクラスに出席することです。課題書を読みこなし、理想的にはクラスに来る前に課題書を読みこなしておいてもらいたい。

 

一点だけ強調したいのは一種の勉強グループを作ってもらいたいことです。公式でも非公式でも。試験の前に、話し相手を作ってもらいたい。実際に私がしたいのは今がショッピング期間中なので次に誰が来るかわからないから、このクラスではなく、クラスの始まる数分前に隣の人に自己紹介してもらいたい。そうすれば彼らは一種の資源をこのクラスに持つからです。このクラスは大教室だから何もしなくても全く名前がわからない。誰かがその方法を選択してそのままやっても全く問題はない。(0906)しかし私が勧めたいのは我々や我々の助手諸君とのある種の接触の機会を作ることである。来週でも助手諸君を紹介したい。我々と話す機会はクラスの最初にも最後にもある。特別のことがない限り私はいつも少なくとも10分前までには来るように心がけているし、喜んで遅くまで君たちと話をしていたい。あるいは私のオフイス時間帯なら講義概要にあるようにメールを送ってアポイントを取って欲しい。私は学生と知的なアイデアやコースの問題を喜んで話し合いたい。そしてキャンパスのどこかで私を見かけたら自己紹介してください。私はこのクラスの人に会いたい。強調したいことは君たちは匿名でこのクラスで過ごすオプションを持っているしあるいは我々と接触する機会を求めるオプションも持っている。以上は公式のコースの説明である。(1002)

 

このコースはどんなコースなのか、何が他のコースとは違うのか。ある人は心理学入門に何か特別な動機を持っているかもしれない。君はクレージーで少しクレージーではなくなりたい。多分もっとよく学んで、性生活を改善したい、夢を解釈して友達に勝ったり人々に影響を及ぼしたい。これらは必ずしもこのクラスをとるために悪いことではないし、性生活の部分を除いてはこのコースはそれらのことで実際に役立つ。科学的心理学の研究は我々が直面する日々の生活での多くの現実世界への妥当性についての洞察力を持っている。これらの問題が現れたとき、それを強調し実験室の調査と日々の生活にどの程度の影響があるかを考えてもらうようにしたい。いかに研究しいかに被験者と交流しいかに人々を説得しどんな治療方法がベストなのかを探ってゆきたい。(1108)しかし一般的なこのコースのゴールは私はこれらよりももっと興味深いものである。

 

私がしたいのはそこにいる「我ら」という最も重要なトピックへの最先端の紹介である。いかに人間の心理は働くか。いかに考えるか。何が我々を我々たらしめているか。我々はそこに様々な方向からアプローチしてゆきたい。伝統的な心理学はしばしば次の5つの派生的領域に分かれていった。神経科学Neuroscience,これは脳を見ることで心理の働きを研究するものである。さらに発展的にこのエリアは私が最も焦点を当てているいかに人々が成長し学ぶかを研究する分野である認知科学CognitiveScienceこれは5つの用語のうちの一つで、あまりなじみがないかもしれないが、心理を研究するうえで一種の計算可能なアプローチで、しばしばコンピューターとの類似性を基にいかに人々が言語を理解し、対象を理解し、ゲームをするかその心理を覗くアプローチである。(1213)社会学がある。これはいかに人々が集団で行動するか、他の人々の集団と交渉するかを研究する。臨床心理学Clinicalがある。これは人々が心理学と聞くとすぐに考えるある心理学の側面で、精神面の健康と病気の研究をするものである。そしてそのすべてを我々はカバーするつもりである。我々はまた関連する領域もカバーするつもりである。心理学の原則だけを見てもっぱら心を研究することはできないと確信している。心理学の原則は如何に心が展開したかという問題が溢れ出ている。経済学とゲームの理論は今や人間の思考と行動を理解するうえで必要不可欠なツールであり、それが心理学やコンピューターサイエンス、人類学、文学、神学など多くの他の領域と結合している。(1300)その意味ではこのコースは広範囲な領域を持つと考えてよい。