中国の鉄道は広軌道を採用しているからか、車輌の幅が日本より若干広い。
普通席の車輌は、二人掛けと三人掛けのベンチシートが通路を挟んで据えられており、それぞれ対面して並んでいる。
あまり目立つこともなく、どちらかと言えば地味な服装をした乗客達は、固いベンチシートに座り持参した好きなお茶を飲んだり、同伴の者と雑談をしたりしながら自由にくつろいでいた。
なかには、隣の席が空いていたのだろうか、窮屈そうに二人掛けのベンチシートに横になって仮眠をしようとする乗客もいた。
また、恋人同士だろう、お互い体を寄せ合って小さな声で話し込みながら、周りの情景は目に入らぬ素振りで、時折見つめ合っては笑顔を交わしていた。そこには和やかな空気が流れていた。
私は一人ではなかった。
この街で出会い恋仲となった中国人の女性が一緒であった。
私達は、後ろに山のような荷物運びを請け負った四人の男達を従えて、普通車輌の乗客たちの訝しそうな視線を浴びながら、先頭近くにある一輌だけのコンパートメントの車輌へ急いだ。
発車までの時間はもう僅かほどであった。
目的のコンパートメントに着くと男達は,あまり要領が良いとは言えないが、それでも手早く荷物を運びこむとあわてて列車から降りて行った。
コンパートメントは、柔らかいベッドが上下二段に据え付けられていた。
対面にも同じベッドがありベッドを挟んだ中央には、窓側からテーブルが突き出て簡単な食事や飲料水を置けるようになっている。
運び込まれた山のような荷物は、私達の座る場所まで占領していっぱいであった。
もうすぐ発車の時間だ。
私は廊下に立ったまま、錆付いて開かなくなった窓枠から外を眺めた。
そこからは、所々床石の欠けた足元の悪いホームを、すっかり冬支度の整った人々が、息を白く染めながら歩いているのが見えた。
私がそれを眺めていると、錆の目立つ窓枠の隙間から時折、硫黄臭の混ざった微かに鼻をつく石炭の煙が漂って来るのに気付いた。
いつの頃か何処かで嗅いだ懐かしい臭いであった。
私はホームから視線をずらし、宙を見るように窓枠から見える小さな曇り空を見た。
その空が瞬く間に晴れ渡るかのように、記憶の扉が開いて私に懐かしさの正体を教えてくれた。
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