ぶんこう先生こと早稲田大学教授、予備校数学講師・故寺田文行先生（正式にはふみゆき。1927～2016）

東北大学理学部数学科卒で、東北大学教授から、当時最先端の情報学科だった早稲田大学理工学部に転身。

その数年後に、予備校で講義されているのを聞いたことがあります。

「本物の大学教授が予備校に来る。」

として、ちょっとした話題になってました。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

その講義は、予備校講師として「みんなが興味を持つことを最初に話すもの」でありました。

開口一番

「戦艦大和を知っている人はいるかな？」

大きくクリアな声色で、そう質問した。

その時に、海軍マニアだった私は、大きく頷いた。

するとそれに（多分）気付いた先生は、私に向かってこう畳みかけた。

「戦艦大和の主砲は、口径何センチかな？」

「46センチです。三連装で３基。計9門でした。」

「うむ。その最大射程はどれほどだったのかな？」

「最大射程は42ｋｍです。」

その距離は、福岡市～朝倉市（または福岡市～壱岐）までとドンピシャ同じだから、いやでも思い出す。

ニコニコと満足そうに微笑む先生。最後の質問にかかった。

「うんうん。では、その時の射出角はいくらになる？」

ははぁん、三角関数の問題として聞いているんだな。

tanθの二次関数と考えればいいわけだ。

「射出角は・・・45度です。」

先生は満足そうに頷くと、意外な数が正解だった。

「よく考えたね。だが、正解は55度だよ。」

「はぁ( ﾟДﾟ)？」

「射出上下角が45°であるという君の意見は、理論上正しい。私もそう考えていたからね。」

「ただ、上下角が45°であるならば、上空何ｋｍになるだろうか？」

「上空21ｋｍです。」

「そんな上空を飛ぶ、となれば、空気の密度は限りなく低い。」

「アッ(; ･`д･´)！」

「そんな上空を飛ぶことを数値に入れれば、かえって上下角を上げた方が飛距離は伸びるんだよ。」

「ま、実際に最大射程で発射しても、相手には当たらないんだけどね。」

「ははぁ( ﾟДﾟ)」という納得した顔で、我々は数学の講義に入った。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

しばらくして、なぜ寺田先生が早稲田大学教授という職にありながら、予備校講師をやっているのか、という理由が分かった。

寺田先生には、一人息子がおり、重度の障碍者だったそうだ。

それゆえに多額の治療費がかかった。

それ故に、教育界で高額の時給が保証される「予備校講師」を選択したようだ。

その上に、同僚たる大学の研究者を支援するためでもあったようだ。

今でこそ知れ渡ったが、大学教授はなかなかなれないし、なったところで箔給だ。

大学教授より、高校教員のほうが何倍も稼げる。

オマケに科研費は毎年のように下がっている。

そんな同僚を支援するために、

自分のキャラクターや知名度を活かし、予備校講師を続けていたんだな。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

ありがとうございました。ぶんこう先生。

ぶんこう先生、大和の46センチ砲で三角関数を撃つ。