おぱよ


今月の地図を広げては

慎吾



「へこんでる」言える場見つけたうれしさ 香取慎吾さんと絵の世界


先日放送された、NHKの「ワルイコあつまれ」という番組は見ていただけましたか? テレビ朝日大下容子アナウンサーが、子ども記者から質問を受けるコーナーに来てくれました。「スマステーション」という番組を16年間、一緒に作ってきた大下さんが、まさかNHKの番組に出演するとは。思わず、「フリーになったんですか?」って言っちゃうくらい珍しいことでした。

 大下さんの魅力は、あのまんまなこと。アナウンサーの中には、番組に出る時は、いい意味でよろいをまとっている人もいるけれど、大下さんは「大下容子」としてニュースに携わっている感じ。結構、強い言葉を話してるときもあるんだけど、トゲがないから見ている人はすんなり受け入れられるんだと思う。穏やかなのに、腹をくくってる。うそがないんだよ。


大下さんは、一緒に番組をやっていたときの僕について、「すごい真面目に向き合っていた」と言ってくれる。でも、そういう僕を作ったのは大下さん。大下さんが真面目だから、僕もちゃんとしなきゃ!と思えたんだよね。隣にいてくれる安心感はすごく大きかった。自分に関心をもってくれているなと思える人とは良い関係を作りたいですよね。趣味が似ていたり、僕が知りたいと思うことを知っている人にひかれるのはもちろんだけど、たとえば、今こうして話をしている時間に、上の空だったり、他のことを考えていそうだなって思ったりする人はよく思えないじゃないですか(笑)。人に興味をもたないと、人からも興味はもってもらえないから、そこはちゃんと向き合いたい。






 4月には、全国巡回した個展「WHO AM I」が終わりました。10代のころに描いた作品から新作まで約200点を展示して、明るい僕も暗い僕も、全部をさらけだした。とくに、赤い目をした黒いうさぎのモチーフ「くろうさぎ」と「上なんか向けないよ」みたいなネガティブな言葉が出てくるスケッチブックは、あまりに「アイドル香取慎吾」とかけ離れていて、最初は出すつもりはなかった。でも、スタッフが倉庫から見つけてきて、スタッフやマネジャーから、「闇と光」というコンセプトに合ってると言われて。

 絵じゃないと伝えられないことだったんだよね。ステージ上では、「最後まで楽しもうぜー!」って盛り上げてるアイドルが、「俺はいま、すごいへこんでて下を向いてるよ」と言うことはできない。だけど、そういう部分も人としてあるし、絵でならば伝えてもいいかもって思えた。その発見が、「香取慎吾ファン」の僕としてはうれしかったな。香取慎吾という人間にあらためて興味をもってもらう機会になったんじゃないかな。

 最近は頻繁に描いてはないけど、筆を使ったり、絵の具を追求してみたり。描き方も変わってきたと思う。新しい曲をひっさげてライブをするように、個展を作りたいという思いは続いているし、まだ出していない絵もある。いつかまた、という気持ちはありますね。(聞き手・松沢奈々子)