父がやらかした


土下座級の話を思い出したので。


私のこまごまとした

やらかし記録なんて

屁でもないような気がするエピソードだ。


父は


昔、とある会社の営業をしていたという。

(転職が多い男だったが、これはかなり初期の職歴だ)


今思うと、あれは

C区の某出版社に勤めていたときのことだと思う。


ある日

営業で、ある印刷会社を訪れたのだそうだ。


当時は


活版印刷の時代。


小さな小さな活字を

1つ1つ板の上に並べて


それにインクを塗って…


紙に1枚1枚印刷して………


という


今思うと途方もない作業だ。


それを考えると

今は相当に便利だし、そういうコツコツの積み重ね(もう、こんな作業には限界だ!とキレた人がたくさんいたんだと思う)が


今の印刷業界を作っているのだと思う。




鉛筆鉛筆鉛筆



父がその印刷会社を営業で訪れた時間


活字を並べる職人さんが


小さな活字を板に並べ終わったところだったそう。


そこへ


大柄な営業マン、父が。(父は180センチの長身だ)



狭い工場内の通路を移動しようとしたら


うっかり


活字盤に体が触れてしまい……




グワッシャーーーーーン………………!!!!


ジャラジャラジャラジャラ……………













コツコツと時間をかけて

並べた活字が

一瞬で台無しに………


いや


《父が》台無しにしてしまったそうだ。


絶望





父は

土下座を実際したと思う。

本気の土下座だ。


その場にいた全員が

顔面蒼白になって


固まってしまって


父は冷や汗をかいて

ひたすら謝り続けたと。


良好だったかもしれない

会社同士の関係が

一瞬でぎこちないものになっただろう。


もやもやもやもやもやもや


いや~、あれにはまいった。

ほんとーーーうに

申し訳なかったよ……


父は頭をポリポリしながら

晩年語っていた。





かつての父の大失態が


今の印刷技術の発展を


少しだけ

後押ししたかもしれない…

なんて思ったりする。



少なくとも


「もう、こんなちまちましたこと、いつまでもいつまでもやってらんねーや!💢」という人が


1人いたわけだから。




あの時の職人さん


ほんと、ごめんなさい。


父の代わりに

もう一度、謝っておきます………