早朝の国道のど真ん中に
その猫はいた
中央線上に
潰れた下半身を
横たえ
捻れた上半身を起こして
行きかう車を
シャーシャーと
威嚇していた
折しも朝のラッシュが
始まる頃で
行きかう車は
数を増しスピードを増し
誰も止れる状況ではなかった
気付いたものは
眉をひそめ
先を急いだ

それでも止るべきだったのかもしれない
排水管に落ちた猫をコンクリートを砕いて救う
それが良心というのなら
あの猫を見殺しにしたボク達は皆失格だ
言葉では繕えない

不条理 不節理 不倫理 不干渉 不感性
ボク達は沢山のnoの中に生きている
そして蝕まれている


国道をうまく渡った猫
それだけが生き延びれる社会

それが現実なのだ


今こそしなければという強い思いが
心を突き上げてくることがある

この果てしなく続く列の先が
おぼろげながら見えた時

切実だが難解な問題の本質が
束の間心をよぎってゆく

そんな時私はこぶしを握る
そしてタメ息をつく

でもすぐに私は
怠惰の羽毛に包まれる

このままが一番楽なのだ
何も見なかったことにしょう

それはちょうど
草を食んでいたインパラが
猛獣の気配を感じた時に似ている

彼はこうべを持ち上げ
耳を澄ませ辺りを睥睨する

そんな筈はないと
草を食み続ける

逃げるには今しかない
何かをやるなら今しかない

握りしめた決意は
みるみる翻意へと変質し

さらさらさらさら
砂時計の砂のように
手応えもなく消えてゆく

それでも尚
私は演じなければならない

この時という容赦なき舞台の上で
最も手ごわい自分自身を相手に

日常というディティールにまみれながら
納得のいく人生という演目を

台本おろか
観客すらなく…