ちがうちがう
ボクが書きたいのは
こんな事じゃない
ちがうちがう
萎えてゆくペン先
彷徨う心
虚ろな言葉

ちがうちがう
ボクが書きたかったのは
そんなことじゃない
悲しいかな
核心を突く
資質も技も
ボクにはない

厄介な心を抱えて
無駄骨を折る毎日
割引スタンプのような日々

どんな集団でもいい
突撃ラッパが鳴ったなら
真っ先に駆けて
突撃したい
頬笑みながら

それは思想や信条の問題ではなく
きっと生理的な何かが
そう強いるんだ

政治が停滞していた
日常を社会を
追い抜いてゆく

一番のろく
一番薄汚く
一番高慢ちきで
でっぷりとした腹に
うすら笑いを浮かべていた
あの旧態依然とした政治が

ボクラを追い抜いてゆく
目覚めて走り出すもの
悪態をついて唾を吐くもの
茫然と立ち尽くすもの

世の中が
軋み音を立てて
動き始める
踏みつけられ
虐げられた
エネルギーが
大きなうねりとなって
不動のものを
圧し始める

時の流れを止め
夢を見続ける者は
慌てふためく
動き始めたものを
止める術は
彼らにはない

あがくのは
止そう
この船に乗って
行ける所まで
行ってみよう
無力な詩を
書きながら
役に立たない
目で
見極めよう


したたかな欲望が
思いあがった理性を
いつの間にか感化して
網の目はほぼ支配を完了した
街からのら犬は姿を消した
暴走族も姿を消した
次は野良猫の番だ
その次はホームレス・老人・病人・障害者…
みんな少しずつ無理をしている
みんな静かに病んでいる

絶え間のない情報が
チクチクと欲望を刺激して
想いと現状とのアンバランスに不安になる
誰もが神経質に手を洗う
体臭を消そうとする
有機質から無機質へ向かう
みんな少しずつ無理をしている
みんな静かに病んでいる

溌剌とした生は
抑制され統制され制御される
犬の糞は持ち帰りなさい
公園で花火をしてはいけません
マスク越しのくぐもった声で
誰もが他人を監視する
みんな少しずつ無理をしている
みんな静かに病んでいる

確かに病んでいる
異常だ異常だ異常だと
ひがな騒ぎ立てた
田んぼの中のカエルは
消去された
青洟を垂らした子どもは
もういない
誰もが抜け目のない顔をしている
大声で笑うのは薬中毒だけ
みんな少しずつ無理をしている
みんな静かに病んでいる