石川寛監督の「好きだ、」を観ました。音楽担当は我らが菅野よう子さん。
ずっといえなかった言葉、どこかに置いてきてしまった言葉と記憶の重み。
変わって仕舞うことと、変わらないことの切なさ。
そんなものを描いた作品です。

 雨降りの中、1つだけある傘はささず、ふたりで教科書を傘代りにして歩く川辺。
 同じものを見たくて、指をさして眺めた川の向こう。
 待ち伏せした学校の手洗いの前。
 お姉ちゃんの口から出た、聴きたかったはずの続きのメロディー。
 空のない東京の、蒼い朝と白い病室、拙いギターの音。
 
 土手の上だから、風が強く吹き抜けるんだよね、
 
 聞こえなかった声も、ちゃんと届いていた。

両手ですくった水があふれ出してしまいそうな、
あるいはガラスの透き通るビーズで作った、そんな印象を受けました。
どこかに忘れてきてしまった想いを呼び起こしてくれる作品です。
うつくしい、風景と、描写と、うつろいです。