日銀理論を放棄した黒田・岩田新日銀体制 | 明日へのミチシルベ

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 2013年4月4日、日銀は「量的・質的金融緩和」を導入した。これは現在の日銀副総裁である岩田規久男先生の長年の主張が強く反映されたものだ。また、この決定は岩田副総裁だけでなく、財務省の中でも従来の日銀の金融政策に批判的であった黒田東彦総裁の決断力による部分も大きい。


 今回の日銀のレジーム転換を実感したのは、黒田・岩田両氏であるが、このシナリオを描いたのは安倍晋三内閣総理大臣であり、この安倍総理の功績は歴史に残るものだろう。僕は1人の日本国民として、安倍総理、黒田総裁、岩田副総裁による日銀のレジーム転換への尽力に感謝したい。


 考えてみれば、今回のレジーム転換に至るまでに、安倍自民党総裁の誕生、自民党の衆院選勝利、安倍総理の再登板、日銀によるインフレ目標政策の導入、黒田総裁・岩田副総裁の誕生、と短い期間に1年前には予想さえしていなかった劇的な変化が生じた。日本国民はこの最大のチャンスを無駄にするべきではないし、日本経済の復活につなげなければならない。


 さて、黒田・岩田体制は従来の日銀理論を放棄した大胆な金融緩和を行なった。日本が20年ぐらい長期停滞しているのは、従来の日銀体制が日銀理論に固執した結果である。


マネタリーベース・コントロールの採用


 黒田・岩田体制は金融市場調節の操作目標を政策金利(短期名目金利=無担保コールレート)からマネタリーベースに変更した。


 旧日銀体制では福井時代に量的緩和政策を採用したものの、それが目指したものは名目金利の低下によって金融緩和の効果を出そうとしたものだった。デフレ払拭へのメッセージを出し、短期金利の低下を通じて、長期金利を低下させ、それによって景気を刺激しようとするものであった。これはゼロ金利政策による時間軸効果を狙ったものと同じものである。名目金利を低下させても、経済に影響を与える実質金利を低下させる余地は小さい。ゼロ金利下ではインフレ率を上昇させる方が実質金利を低下させる作用は大きい。


 一方、黒田・岩田体制の量的緩和政策は2%のインフレ目標政策を達成するための手段であり、人々のインフレ予想に強く働き賭けるもので、長期国債の買い入れ対象を40年債にまで拡大した。その上で買い入れる国債の平均残存期間を3年弱から7年程度までに延長した。インフレ目標が導入されているので、今回の量的緩和政策は2000年代の量的緩和とは異なり政策目標が明らかにされている。また、前回の量的緩和が日銀当座預金残高を対象にしていたのに対して今回は日銀のバランスシートを対象にし、その拡大をすることを明らかにしている。日銀のバランスシートはマネタリーベースを反映しているものであるので、マネタリーベースがどの程度拡大するかを把握することができる。


 日銀理論によって生み出された資産買い入れ基金と銀行券ルールは廃止、一時停止となった。これはマネタリーベースの拡大の障害がなくすものとして評価できる。


 日銀理論が放棄されたことによって積極的な金融緩和が行われることになった。今回の金融緩和は日本経済を復活させる強い措置となるだろう。金融緩和発表後、円安と株高が進行している。政策のレジーム転換が行われた結果である。