[日銀人事]民主党がやるべきこと | 明日へのミチシルベ

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 政府が2月28日に日銀正副総裁人事案を提出した。総裁には黒田東彦氏、副総裁には岩田規久男先生と日銀プロパーの中曽宏氏が提案されている。僕は黒田氏と岩田先生の起用には賛成で、特に岩田規久男先生には全面的に賛成というかむしろ岩田先生に日銀総裁になってもらいたいぐらいなんだ。


 中曽氏については所信聴取を聞かない限り何とも言えないが、まあ、「賛成」とは言えない。日銀プロパーだとクズであるという真理は存在しないが、仮説なら十分に存在するからだ。日銀総裁・副総裁は日本経済の再生の能力を首相以上に持っているためにそのような人事でクズであるという仮説がある日銀プロパーの候補を入れるリスクをおかすべきじゃないと思う。現に日銀出身者である国会議員の津村啓介は岩田先生の副総裁案には「反対」というクズみたいな考えを持ってるわけだから。


 さて、政府が日銀人事案を成立させるためには国会の同意が必要だ。衆院は自民党が過半数を有しているから、問題なく政府案は通過するだろう。ただ、参院は過半数を有している政党がなく、第1政党が民主党だから確実に通過するとは言えない状況だ。


 民主党はやるべきことは日銀人事を政争の具にせず、誤った考えに基づいて行動しないことだ。仮に政府案に反対するとしても、黒田氏と岩田先生には賛成し、中曽氏には反対することぐらいが正当だろう。また、民主党は3人の候補者の所信聴取の際には的外れな質問で時間を無駄にせずに3人の金融政策の考え方(特に中曽氏の考え方が安倍政権の方針と整合的かどうか)がどのようなものかを追求しなければならない。


 ただ、民主党が2月5日に示した日銀人事同意条件の内規や前原誠司(次の内閣 ネクスト財務・金融大臣(笑)そんな資質ないだろ)の主張を見る限り、民主党が正しい行動を取れるかは疑問だ。


 民主党の内規の1つには以下の考えが書かれている。


政策目標の共有など政府との緊密な連携を行いつつ、日銀法に定める金融行政の独立性を堅持する能力、胆力を有すること。また、政府に対して財政規律の堅持、成長戦略の断行などを求めるに足る識見や実績を有すること。


 うーむ、中央銀行の責務は物価の安定なので、財政規律の堅持や成長戦略の断行を求めることは、日銀の業務(政策)の範囲外のことだと思うのだが、まあそこにはあまりツッコミを入れない。問題なのは赤文字の部分だ。


 ここに書かれている「日銀の独立性」は日銀法に定められていることを参考にしているのだろう。日銀法には「独立性」でなく、「自主性」について書かれているんだが、「自主性」を「独立性」と置き換えることもできる。

 

 日銀法の第4条には「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」明記されている。この内容だと日銀が「目標の独立性」と「手段の独立性」を有しているとも解釈できる。世界的には中央銀行が有している独立性とは「手段の独立性」であり、「目標の独立性」は政府が有していることが一般的だ。政策の目標を選挙で選ばれた政治家でなく、選挙で選ばれたわけでもない中央銀行の運営者たちが決めることには問題があるからね。民主主義にも反することだ。


 だから、民主党は自らが考えている日銀の独立性が「目標の独立性」なのか「手段の独立性」なのかを明らかにするべきだ。それをやっていないせいで「岩田氏の副総裁案には反対」と言う津村のような愚かな議員が出てくるんだ。仮に民主党が日銀の独立性を「目標の独立性」と考え、津村の考えを支持し、岩田先生の反対に動くようなら、この党には存在価値など全くなく、所属する議員にも存在価値はなくなるだろう。


 さて、民主党の有力者の1人である前原誠司は安倍政権の金融政策について以下のような考えを主張している。


「大胆な金融政策」については、民主党政権でも積極的に取り組んできました。とりわけ、私が民主党の政調会長の任にあった一昨年の夏から昨年の夏にかけては、党内で積極的な議論を行い、私も様々な形で日銀と意見交換を繰り返していました。その結果、昨年2月に日銀は「物価上昇率1%を目途とする」と実質的に「インフレ・ターゲット」に踏み込みました。また、私が日銀との連携を図る政府側の窓口である経済財政担当大臣であった昨年10月には、歴史上初めて政府と日銀が「共同文書」という形でデフレ脱却の重要性を確認しました。これは政府と日銀の「アコード」に限りなく近いものであったと思います。

 安倍総理が現在主張している「大胆な金融政策」は、これまで民主党政権が進めてきた強力な金融緩和、日銀の密接な連携の延長線上にあり、方向性は一致しています。デフレ脱却は日本経済再生に向けた不可避の課題ですので、どの党が政権を担っても真っ先に取り組み、これを実現しなければなりません。ただし、日銀法を改正して政府が日銀総裁を罷免できるようにする、という点は賛成できません。日銀の独立性は歴史の教訓であり、先進国共通の枠組みです。これを維持できなければ、日本の通貨や財政に対する信頼が失墜し、かえって日本経済を混乱させると思います。


 前原は本当に金融政策やインフレ目標や中央銀行の独立性について理解しているのだろうか?よくもまあ、日銀の似非インフレ目標である「インメド」を「実質的にインフレ・ターゲットと言えるものだ。日銀のインメドについて日銀は、説明責任や達成期間などを明らかにしていないから、お世辞にも「インフレ・ターゲット」といえるものじゃないんだ。さらには、民主党政権は金融政策について大して何もやってこなかったくせに安倍首相の金融政策の考え方を民主党の政策の延長線にあるものだと言い訳をしている。


 そして、前原も津村と同様に日銀の独立性を「目標の独立性」と捉え、日銀法の改正に反対している。もし、「手段の独立性」だと考えているならば、日銀法の改正には反対しないはずだ。しかもタチの悪いことに中央銀行の独立性は「目標の独立性」であることが、先進国の共通の枠組みだと大嘘をついている。


 果たして、このような誤った考え方を持っている民主党が日銀人事において正しいことができるのだろうか?僕は、それは民主党(支持率1ケタ)が政権を奪還するぐらいに困難なことだと思う。