資料:デフレ・ターゲット | 明日へのミチシルベ

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経済とか映画とか書いてます。メモとしても使ってる。

 20063月、日銀は量的緩和政策を解除した。コアCPIの上昇率がゼロを上回ったためである(図3)。更に同年7月には日銀はゼロ金利政策を解除し、引き締め政策を開始した量的緩和政策とゼロ金利政策の解除は時期尚早の判断であったことは、その後の消費者物価指数上昇率が示している。なぜなら、2006年から2008年までにコアCPIの上昇率がプラスになっているのはこの時期に原油価格が上昇していたからである。


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(出所)総務省統計局「消費者物価指数」

日銀の量的緩和政策の目的はコアCPI上昇率が安定的にゼロ%以上にすることであった。だが、コアCPI上昇率がゼロ%以上に推移することは必ずしもデフレから脱却することを示すものではない。なぜならコアCPIには変動が激しいエネルギーが含まれているために、原油価格が高騰するだけで、コアCPIは上昇するのである。そのために物価を把握するためには変動の激しい生鮮食料品及びエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の動きを見なければならない。



 コアコアCPIを見ると、日銀が量的緩和政策とゼロ金利政策を解除した2006年はマイナスを示している。つまり、日本はまだデフレの状態だったのである。日銀は2000年のデフレ下でのゼロ金利政策の解除と同じ過ちを繰り返したのである。

 

 そもそもCPIには統計上の問題で上方バイアスがあるために真のインフレ率よりも高い数値が出る傾向がある。CPIの示す数値と真のインフレ率には1%程度の差があるため、日銀はゼロ%以上の安定的なコアCPIを目指すならば、少なくともコアCPI1%になるまで量的緩和政策を続け、なおかつ原油価格が上昇しているときはコアCPI1%を超えたとしても量的緩和政策の解除を見送るべきだったのである。



 ところで、図3のコアコアCPI上昇率を見ると、ほとんど期間においてコアコアCPIは-1%からゼロ%の間を推移している。白川総裁は金融緩和だけでインフレ目標政策を達成するのは「相当の努力が必要だ」という発言をしているが、日銀はどうやらインフレ率をコントロールする能力を持っているようだ。ただし、それはマイナスのインフレ率をコントロールする能力であるために、日本国民にとって迷惑以外の何物でもないが。日銀は-1%からゼロ%の「デフレ・ターゲット」に成功している。そのようなことを行なっている日本銀行が23%のインフレ率を実現できないわけがない。それを「相当の努力が必要」だと言うなら、日銀は意図的に「デフレ・ターゲット」を行なっている可能性があると考えられる。