スリジエハートセンターには天才外科医の双子がいるという。
美しいものには棘があるというが双子はまさにといっていい存在だ。
双子の兄・ゆきぴこは神に愛されし悪魔。
唯一無二の手技を持つ天才だ。
弟の征司郎もまた手術失敗など皆無の天才。
そしてこれは天才2人に愛された大型犬の物語である。

この日のゆきぴこ先生は暇を持て余していた。
自分に見合う患者がいないと暇なのだ。
バカンスに行こうか、ゴルフに行こうか、それとも…
考えていたところに弟が部屋に入ってきた。

「おや、せいしろー。お兄ちゃんに会いたくなったのかい?」

兄の軽口はガン無視で術後の様子…兄は大きな手術を終えてまだ間もない。
経過を確認しようと衣服に手を伸ばした。

「やん。」
「変な声出すな。」
「ふふ、声も一緒だと思うよ。」
「そういう意味じゃねえ。」

ぶっきらぼうな弟。けれど兄はまったくめげない。

「ねえ、せーしろー。なにして遊ぶ?」
「暇じゃねえよ。」
「えー、働き方改革って知ってる?日本人は働きすぎだよ。」
「お前も日本人だろうが。」

日本人だが海外暮らしが長い兄。
そこには深い事情がある。

「僕は…日本では育っていないからね。」

しゅんと影を落とせば弟が怯むのを分かっている兄。
口は悪いが兄に対してはあまり強気に出られないのも分かっている。
つまり、弟をいじるのたのしーーーい。

「なにがしてぇんだ。」
「そうだねえ。あ、そうだ。僕ね、行ってみたいとこがあるんだ。」

電子パッドに映された“行ってみたいとこ”に征史郎は眉をひそめた。
いや、眉間に皺をギッチギチに寄せた。

「こういうところはスイーツが美味しいんだろ。
日本にメイドさんがいるとは知らなかったよ。
しかも彼女たちは魔法がかけられるらしいんだ!!」

いかにも純真な心で言ってるように装っているがもちろん嘘だ。
高級志向で美意識高い彼がメイドカフェに行きたがるはずもない。