にのちゃん入所祝い記念

 

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目当ての物を無事に買い、ふと視線をあげたその先。
見覚えある猫背を見つけた。

なにやらビニール袋。ああ、コンビニ行ったのか。
少し視線を横にずらせばニノが持っている袋と符合するコンビニ。
ふむふむ、なるほど。

こうして町中でメンバーに出くわすことなど滅多になくて
ちょっとテンションが上がる。
すぐにでも追いかけたいが生憎俺とニノのいる場所は大通りを挟んでいて
目の前の信号は赤だったりする。
そうだ、ライン。そう思ってポケットのスマホを探ろうとしたところで
信号が青へ変わった。ならば追おうではないか。
歩きスマホはよろしくない。
自然に軽い足取りでずいぶん離れてしまったニノを追いかける。
カズナリニノミヤ待ちなさーい。なんつって。
軽く走るような速度でニノとの距離を少しは縮めたものの
向こうも少々急いでいるのかいつもより速い速度で歩いている。

珍しい。

なにか用事でもあるんだろうか。今日のニノの予定は夕方からで
つまりは現在プライベートタイム。
あいつを急がせるなにかってなんだ?
興味がそそられ、さらに足を速めたものの「櫻井さんですよね。」の声に阻まれた。
振り返れば女性2人がキラキラした目で俺を見つめているではないか。
国民的アイドルゆえ、致し方ない。
決してキャーキャーに喜びまくっているわけではない。
いや、嬉しいけど。これもファンサ。うんうん、いつも感謝しているわけですから。
求められるがまま握手に応じ、事務所の決まりだからと写真は丁重にお断りして
にっこり笑ってサヨナラを告げる。彼女たちは頬を赤らめ興奮した様子で
ありがとうございました!応援してます!と言ってくれた。
実に気分がいい。


いやいや、そうじゃなくて。ニノ。ニノはどこ。
さっきの女性達の声に気付くかとも思ったのに気付いた様子もなく
スタスタと歩き去ってしまったあの猫背。
まあ、ニノまで見つかったら大変っちゃ大変だし、これで良かったのかもしれない。

兎にも角にも先を急ぐと、ああ。良かった。
なにやら足を止めてウインドウの中を眺めているニノがいた。
なにか欲しいものでもあったんだろうか。
あいつが興味あるものなんてゲームくらいだけど。
それにしても幸せそうというか、やたら嬉しそうな顔してんな。
なんなんだ???疑問に思いつつあまりにいい表情だったから
スマホを取り出しズームイン。パシャリと1枚撮ってやった。
いつも勝手にメンバーを撮りまくるニノだ。かまうまい。

 



そうこうしていると満足したのか歩き出した。
いかんいかん。俺も急がねば。つか、まじで気付かねーなあ。
ぼけーっとしてんのか、やっぱ急いでいるのか。
先ほどまでニノが立ち止まっていたウインドウに差し掛かった。
すっと視線を向ければそこにいたのは見知った顔。
Jun Matsumotoやないかーい!



なるほど、ここはドラッグストア。
彼がCMを務めるジュレームの結構でかめなヤツが貼り付けてある。
ったく。しょっちゅうメンバーとしても顔を合わせ
さらに言うともう何年も付き合っている恋人の広告に見惚れるってどんだけだよ。
苦笑しつつもやっぱ可愛いなと素直に思う。
ジュニア時代から言えばもう知り合って20年もの時を共にいるというのに
その初々しさたるや。はは。よし、これも撮っておこう。
…俺が映りこむな。まあいいか。外に出すもんでもない。
あとでグループラインにでも放り込むくらいなもんだ。

撮れた写真を確認し満足したとこで、そんな場合じゃないと思い出す。
俺だって暇なわけじゃない。これから現場に向かうのだから。
猶予は30分といったところ。
ニノちゃんはどこかなー?そういや、ここ。ニノんちの近くだ。
今になって気付いた。そうか、家に帰るところだったのかも。
だとすれば向かう方角は明確だ。確信を持って進めばほらな、猫背が見えた。
先ほどまでは気付かなかったが相変わらず寝癖がぴょこぴょこ踊ってる。
しょうがないヤツだな。国民的アイドルなのに。
さっきの俺のようにファンに声をかけられたとき恥ずかしくはないんだろうか。
ないんだろうな、あいつは。ふふ、こぼれる笑いをそのままにさらに近づけば
ああ、、おお!!!Jun Matsumotoやないかーい。
見慣れている俺でもそのスター性にちょっとビビるぜ。
いつからあいつあんなんなったんだ。
いや、、でも、、、あれ、、、ニヤけてんな。
間違いなくニヤけてんな。こんな爽やかな昼前の太陽の下で間違いなくニヤけてる。
つーか、デレデレしてる。すげえ嬉しそうにしちゃって。
だからさ、しょっちゅう会ってるだろうになんでその顔できるかね。
そんなもんかなー。ま、でも。そこがこいつらの可愛いとこだよな。
どうせ俺からは猫背しか確認できないニノも同じような顔してんだろ。