大人の対応で「別にそんなこと思ってないよ。」とばかりに。
まあ、早い話。ニノの手前かっこつけて相葉くんと話してみたら
確かにニノの言うとおりバカじゃなかった。
気は優しくて力持ち…っていうのか。嘘じゃない優しさがあるというか。
人に良く思われようとしての優しさじゃないって常に斜めに人を見てる
根性のねじまがった俺でも分かった。
あまりに優しくて自分が損しても…ってのはバカとも言えるかもしれない。
いや、今までの俺なら即バカだと決め付けてただろう。
でもじっくり相葉くんを知ってみればなんとも屈託なくて憎めない。
それに、優しさを履き違えていない。言いなりとは違う。
自分の中にちゃんとルールがある。
そんな彼を確かにバカじゃないと俺が認めるや否や
ニノはと言うと悪戯な目で相葉くんに向かって「バカ」を連呼していた。
なんなの、お前ってそんな態度が面白くて可愛くて俺とは違う角度で
ひねくれてるニノにますます興味をもった。
さらにさらに俺に対してまで「バカ。」なんて言ってくる様になった。
くすくす笑いながら「バカだねー、翔ちゃんは。」なんてさ。
俺をバカ呼ばわりするヤツなんて初めてでこれも新鮮で面白くて
むしろ嬉しいとまで思った。すっかり仲良くなった相葉くんが
俺のことを「翔ちゃん」と呼ぶのをマネて「翔ちゃん」と呼んでくることもあった。
「翔ちゃんは俺の方が先に仲良くなったんだからね!」
「んっだよ、いいだろ。別におれだってもう翔ちゃんと仲良しなんだかんな!」
仲良く言い合う2人は兄弟みてー。うん、兄弟で間違いない。
「仲良くって先輩に対してなんだその言い方は。」
な~んて言いつつも頬がゆるむのを抑えられない。
もちろん、ニノはバカじゃないから親しげにしてくるのは場所をわきまえる。
2人だけの時とか相葉くん、松本しかいない時に限ってのこと。
自分で言うのもなんだが櫻井会長リスペクトなシンパにそんなの知られたら
どうなることか分かったもんじゃねーし。
「んふふ、バカだね、翔ちゃんは。」
初めて言われた時の全てが俺の中でいつまでも消えない。
悪戯な茶色い瞳でふにゃんとした唇で俺をぺチンと叩きながらだった。
なんだ、その可愛いぺチンはと心でそっと悶え
次はいつ言われるのかを楽しみにしていたりもするわけだ。
その為に他の役員を生徒会室の外に出そうと画策する俺がいたりもするわけで
ようするに、ニノに夢中なんだ。不思議なくらいに。
本来なら上級生に向かって、しかもこの櫻井翔にバカだの翔ちゃんだのなんてのは
許しがたい言動だ。だけどニノだから。むしろニノだから。
その、なんつーか、嬉しいわけだ。
つまり。それは…もはや恋だった。
色々理屈をこねくり回してみたけど早い話、俺はニノを好きなんだ。
そういう対象として。自覚せざるをえない状況が多々ある。
最初はニノとの会話が楽しいのはストレスがないからだと思ってた。
賢い俺に見合う賢いニノの存在を嬉しく思っているのだと。
ある日、俺の作成した資料に目を通したニノが、ほぅと息を吐いたんだ。
「この1枚があるだけでグンと分かりやすいね。」
指摘のページは俺がそれこそドヤ顔で付け加えたもの。
きっと誰もそのページの意味など理解しないと思っていたし
気づかれないことがむしろ自分のレベルの高さを意味しているとほくそ笑んでもいた。
なのに、それをあっさりとニノは理解した。
俺の心を鷲掴むには十分だった。
こんなに俺を、俺の能力を理解できるヤツがいるなんて。
だから、だからこそ。最初は恋だなんて気づけなかった。
一目おける存在なんだと見誤った。
でも違った。
気づけばニノを目で追いかけている俺。
知性ばかりじゃなくて、くるくる変わる表情に目を奪われる。
まるっこい手なのに器用だったり、力がなかったりが可愛くてたまらない。
重い資料にフラつくのを、わざとしばらく眺めた後で手伝えば
「助かったぁ。」
心底ほっとした、とろける笑顔を向けられ胸が高鳴った。
そういや、ニノを眺めている間俺はなにを思ってた?
可愛いって、確かに。可愛いってなんだ。いや、後輩を可愛いと思うのは普通だ。
最初はそう思おうとした。
だけど、どうにもニノをかまいたい。
衝動で丸い背中をツツーーッと辿れば「ひゃん!」と小さく叫びをあげられ
潤んだ瞳で「もうっ!」と怒られて…
俺は自分がこいつに恋したと認めた。
今や言い訳などできないほどにニノのことばかり考えてる。

