このおはなしは「YES!恋愛進行系」の番外編です。

これだけでもなんとなく分かるとは思いますが。たぶん。

 

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今日は智がせんせーのとこだからって、まーが俺んちにお泊まり。
ちょこちょこ智関係なくお泊まりしてるけどさ。

ようやく、まーを好きでいる自分に慣れてきて
前みたいにちょっと自分でひくくらい意識しちゃうってのは薄れてきた。
それでもやっぱ時々ドキドキが止まらなくなっちゃうときあるけど。

「にのちゃん。なにする?これ?」
「あ、うん。そっちのがね、対戦おもしろいから。」

最近はふたりで対戦ゲームすんのに嵌ってて
昔のヤツをネットで探しては買ったりもしてる。
そういや、この前注文したやつそろそろ…そう思ったとこでチャイムが鳴った。

「はいはーい!」

返事をしてすぐにドアを開けると見慣れた宅配屋さん。
サインして受け取るとやっぱり届いたのはゲームだった。

「にのちゃん、誰?」
「宅配だよっ!ゲーム!ゲーム届いたからこれやろ!」
「まじ?ナイスタイミング!」

ちょこっと顔を覗かせたまーにピースを向けると、まーも嬉しそうに返してくれた。

「珍しいですね。」
「え?」

宅配のお兄さんの言葉に首を傾げる。

「ああ、すいません。お兄さんじゃない誰かがいるの初めて見たので。」
「え?ふふっ。お兄さんって…あのひとはお兄さんではないけど。」

恐らく智のことを言ってるんだろうな。そうなんですねーと笑って
宅配屋さんはありがとうございましたって帰っていった。

「ねえ、にのちゃん。さっきちゃんと誰か確認した?」
「えっと、たぶん?でもでもさ。今日は宅配って分かってたから。」
「気をつけないとダメだよ。変なひとだったらどうすんの。」

心配そうな顔して俺をぎゅっと抱きしめてくれる。
ちょっと過保護だと思うけど嬉しい。まーはこんなに俺を好きでいてくれる。

「ねぇねぇ、宅配屋さんにも妬いちゃうの?」
「くふふ。宅配屋さんにも妬いちゃうよ。にのちゃんは俺だけ見てればいいの。」

甘い言葉をくれるから、もうゲームなんてどうでもよくなっちゃった。
だって、もっともっと甘いものがほしい。

「ね、まーくん。」

俺の呼びかけにまーの目が雄のそれになった。幸せすぎて怖いくらい。
まーの背中にまわした腕にぎゅっと力を込めて甘い甘い口付けを強請った。

それから1週間くらいした頃。
ピンポーンとチャイムが鳴った。この前、まーに言われたのを思い出して
ちゃんと誰かを確認する俺ってイイコだよなあ。なんて自画自賛。
インターフォンの画面にはいつもの宅配屋さんがにこやかに笑うのが映ってる。
攻略本を買ったのを思い出してドアを開ければやっぱりそれだった。

「今日はどなたもいないんですか?」
「ん?ふふ、そうだね。今日は俺ひとり。」

まーがバイト帰りに来てくれるって言ってたからご飯作って待つ約束。
いつもサークルで作ってもらってばっかだから
少しくらいと思って母さんに料理習い始めたとこだ。
母さんはものすごく嬉しそうにしてくれるし、時々姉ちゃんも参加する。
こんな風に家族と過ごすことが出来るようになったのも、まーのおかげ。
自分じゃ分からないけど母さんや姉ちゃんが言うには穏やかに笑うようになったって。
前はなんか可哀想な顔してたって。よく意味は分からないけど
きっと幸せだってのが顔にも出てるんだ。

「じゃあ、寂しいですね。」
「え?」

つい今日の献立のことを考えてぼーっとしてたから、
なに言われてなにされてるのか、すぐには判断できなかった。
気づいたら宅配屋さんが部屋に押し入っていて俺を抱きかかえていた。

「え?な、なに?」
「ベッドどこ?道具はあんでしょ?」
「は?」

意味が分からないけど、どう考えても考えなくてもこの状況はおかしくて
必死で暴れるのにビクともしない屈強な身体の男。
いつもニコニコ荷物を運んでくれていた人とは思えない。

「まじで気づかないんだもんな。昔からだけど。」
「え?む、むかし?」

思いのほか丁寧にベッドに降ろされたけど俺を組み敷いて掴んできた手首は痛い。

「何度もヤッたじゃん。その度“にのちゃん”は俺を覚えてなかったけどな。」

ニヤリと笑う下卑た顔にゾクリとする。昔、遊んでたときに寝た男のひとり?
何度もって。俺は1回寝たやつとは寝ない主義なのに。

「覚えてないんだから何度やっても覚えてないよな?初めましてのふりすりゃさ
2度でも3度でもヤレるって気づくのに時間はかかんなかった。」

う、、そでしょ。そんなの、そんなの俺知らな、、、、

「あの界隈に顔見せなくなってさ、探してたんだよ。お前の身体まじで最高だった。
またヤリたくてさ。まさか宅配先で見つけるとはね。なんて、期待はしてたんだけど。」

舌なめずりして俺の服をベロリ捲りあげた。

「やめろよっ!!俺、もうそういうのはっ!」
「よく言うよ。少なくとも2人男いるんじゃねえか。」

なにゆって、、、俺の身体を太い脚でガッシリ押さえ込んでベッドサイドの
引き出しを探ってゴ ムとロー ショ ンを取り出すとニヤリと笑う。

「部屋に引きこむ主義になったんだな。不特定多数は怖くなった?
病気でももらっちゃった?安心しなよ。俺病気もちじゃねえしゴ ムもしてやるから。」

またエ ロ イ 身体堪能させろよって覆いかぶさってきて首に舌が這う。
気持ちわるい。やめろ、やめろ、やめろ。嫌だ、嫌。助けて。まー!まー!
どんなに抵抗しても笑われるだけ。簡単に服を剥ぎ取られ「ココだろ?」と
俺の“イイトコロ”をまさぐってくるけど、全然良くない!
嫌だ。気持ち悪い。ボロボロボロボロ涙が零れる。何度コイツを殴り
何度イヤだって叫んだか分からない。暴れて暴れて暴れていると「ぐおっ!」
くぐもった声がしてそいつが脱力した状態で覆いかぶさってきた。

「大丈夫!?」

重みが消えた瞬間見えたのは俺の好きなひと。

「まー!」

叫んで抱きつこうとして、、、手が引っ込んだ。
俺、この人に手を伸ばしていいの?こんな俺。だって、俺。俺は。

「にのちゃん。」

ボロボロ零れる涙を親指で拭われ、ふわりと抱きしめられた。
そうなったら抵抗なんかできない。そのあたたかさに溶けてしまう。

俺を片手で抱きしめておいて、もう片方の手で器用に警察に電話をかけてる。
ほら、服着てって、さっきまで着てたのとは違う服を着せられまた抱きしめてくる。
いつの間にか男は後ろ手に縛られてた。

「あれね、絶対に解けない結び方なんだよ。」

自慢気に笑う。笑って「間に合った?」って背中をさすってくれる。
怖かったろ?って。あったかい手が俺を包み込む。

「ごめ、、ごめんなさい。俺、俺、」
「なんで謝るの?なにか悪いことしたの?」
「だって、こいつ俺が昔っ」

目の前のまーはニコリと笑って俺の唇に指をあてた。

「過去でしょ。どうでもいいって言ったじゃん。変なこと考えたら許さないよ。」
「変、、じゃ、、ない。」

やっぱ俺。こんなんじゃこのひとに相応しくない。
今までだって何度も思った。過去は消せない。消せずに時々こうやって姿まで現す。

「じゃ、どうしたいの?俺と別れるの?」

怒ったような声に、また涙がこぼれる。

「やだ、、、別れたく、、ない。」
「ならいいよ。別れない。それでいいでしょ。」
「でも。」
「でもじゃない。」

でも、だって、俺、やっぱ汚れてる。俺なんか、俺なんか、、、

「俺の隣で笑っていてくれればいいって言ったよね?」

「俺だけを好きだろ?」

「いつか俺と暮らすって言ったの嘘にすんの?」

なのに、なんであなたはそんな優しいことばっか言うの。
なんで、そんなに心が広いの。俺なんかを受け止めてくれるの。

「嘘になんか、、したく、、、ない。」

こんなこと言うワガママ俺に許されるの?ほんとに?

「じゃ、嘘にすんな。絶対にすんな。」

真剣な顔してさ。なんでそんな男らしいの。

「にのちゃんの過去はどうにもできないけど
にのちゃんの現在と未来は俺のだから。全部俺のだから。」

約束やぶったらひどいからね?絶対、絶対、守ってよって抱きしめてキスをくれた。
嬉しくて、その分申し訳なくて次から次へと溢れる涙。
俺、絶対に嘘なんかにしない。
こんな俺を受け止めてくれる人なんて、この人以外いない。
受け止めてほしいと願う人もこの人だけ。

「俺の未来。まーが独占してよ。」
「もちろんだよ。」

嬉しそうに力強くまーが笑ってくれたから、ほっとした。
もうダメかと思った。さすがに呆れられても軽蔑されても仕方ないと思った。
まーに俺はふさわしくないって思いながら捨てないでって何度も何度も願ってたんだ。

その後、警察が来て事情徴収されたり、智にこっぴどく叱られたり散々だったけど。
まーがね、ずっと隣にいてくれたから平気。ぎゅって手を握ってくれてるから平気。
俺の未来もぎゅっとしてくれてるから平気。
イチャついてんじゃねえ!って余計に智には怒られちゃったけどさ。
でもいいの。まーがいればなんだっていいの。
そんな俺に最後は智もバカらしくなったって先生に電話して愚痴り始めたから
悪いとは思ったけど、まーとふたり笑っちゃった。

ごめんね、まー。
ありがとう、まー。
こんな俺だけど、俺の未来、絶対もらってね。
大好きだよ。

 

 

 

 

短編祭りこれにて終了。

明日の夕方、次回の長編についてお知らせします。