「どうやらアイツ、やっぱりパークに行ってたんだってよ」

こっそり韮山が教科書の陰から耳打ちしてきた。

「そうか。やっぱりテーマパーク、効いたな」

小声で返し、高梨の広い背中に目をやった。


週明けから復学した高梨を、ボク等はビビりながら迎えたんだ。

ヤツは問題児だった。
誰彼構わず暴力をしかけ、カツアゲをする。
女子にだって容赦しない。
それに気づきながら、センコー達は何もしなかった。

だから一ヶ月前、韮山とボクは、『ニコニコパーク・お客様センター』に駆け込んだのだ。


『ニコニコパーク』は、よくある疑似体験パークだ。
ヘッドセットを被りカプセルに入れば、お好みの体験を満喫出来るって寸法だ。

変わっているのは、経営母体が警察庁だって事。


今の少年法では、18歳未満は実刑判決を受ける事はない。

だから疑似体験。

しかも“少年には未来があるから”、一ヶ月を一週間で済ませる。
アイツの場合は三週間で出てきた。


一番の特徴は、自分が被害者になってヤられ続ける事。



高梨は、クラスのみんなに、三ヶ月間、カツアゲされ、暴力を振るわれ続けた学校に、“本当に”登校して来たってワケだ。