肩の銃も、朝の三倍くらいに感じる。
「なあ、もう一軒行かないか?」
「悪いな、オレ、次最終なのよ。」
佐々西は三番ホームへ、千鳥足で消えていった。
もう午前一時も近い。
また女房に嫌みを言われるな。
別に二時間もかかる郊外へ帰る訳じゃない。
たった、ふた駅、五分も揺られない。
乗り心地も、中央の払い下げながら、すこぶる気持ちいい。
ただ、家に帰りたくないだけだ。
30年ローン、払い終わるまで生きてられんのか?
買っちまった自分に腹が立つ。
何故なら、今日は同じ路線の吉成部長の通夜だったからだ。
空手が自慢の猛者だったのに、あっさり死んじまった。
やっぱり、こんな銃じゃダメなんだよなぁ。
ここ2112年の東京は、100年前の危機を脱した後、再生医療の目覚ましい進歩で、好きな所をいくらでも取り替えられる様になり、結果、寿命が延びた。
また、そのお陰で、子供も複数持てる様になったのだ。
経済が潤った我が国は、昭和の始めの頃の様な大家族が、爆発的に増えた。
困ったのは政府だ。
元々周りを海に囲まれたこの国には土地がない。
だからって!!
国はとんでもない解決案を実行した。
くじ引きで家を建てる時代を選ばせたのだ!
方針はただひとつ。
過去、人間が発生する以前の時代に住まいだけ引っ越す事だ。
お陰で俺はジュラ期住まいだ。
タイムマシンの駅を出ると、街灯もない草むらを、俺は我が家目指して一、目散に走り出した。