中国苦境、統計で読む | マクロ経済のブログ

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「デフレーターを実際より低く見積もり、実質GDPを高く計算しているのではないか?」7月15日、中国の4~6月期GDPを発表する記者会見で、英紙フィナンシャル・タイムズの記者と国家統計局の報道官の間でちょっとした論争が起きた。

4~6月期は固定資産投資などいくつかのデータで、実質値が名目値を上回る「名実逆転」が起きていた。

報道官は欧米と中国で、四半期GDPの計算法に違いがあると主張。物価が下落基調にあるため、物価影響を除いた実質は、名目よりも底堅かったと言うのだ。

名実逆転がなければ、成長率は目標の7%を下回っていた。鉄鋼などの生産能力過剰が深刻な中国では工業製品の価格は下落基調だが、消費者物価指数(CPI)は1~2%のプラスで推移する。非公表のデフレーターを確認して、統計の信頼性を判断したかったというのが質問者の問題意識だろう。

中国の統計の正確性には、あまたの疑問が投げかけられていた。政府の想定を上回るペースで景気が減速する今、海外への資本流出を食い止めるためにも「お化粧」を施す動機は十分のように見える。

ある運用会社は「中国GDP成長率の実態は公表値より0.5~1%ほど低い可能性がある。5%台でも驚かない」と分析する。根拠の一つが「李克強指数」。銀行の新規融資と鉄道貨物輸送量、電力消費を合成した指数だ。李克強首相が遼寧省のトップ時代の07年、GDPより重視する数字だと伝えられたものだ。

銀行融資など3つの数値をどの割合で合成するかで多少の違いが出るが、この李克強指数、足元は0%成長にまで落ち込んでいる。プラスなのは融資だけで、電力消費は横ばい圏で鉄道貨物の輸送量は2桁マイナスだ。

李克強首相指数が映し出す第二次産業は、今も中国GDPの4割以上を占める。そう考えると7%成長を支えるほどの勢いはなさそうだ。14年に15%の伸びだった固定資産投資が15年1~8月は10.9%まで鈍化していることも、このままでは一段の成長率低下が避けられないことを示唆している。

統計の信頼性からも、10月19日発表予定の7~9月期のGDPの中身が注目される。「4~6月期は株バブルで金融業のGDPへの寄与が大きく伸びていた」(三井住友アセットマネジメントの郭エコノミスト)。

金融業の貢献がなければ7%割れしていたとの見方は多いが、株バブルがはじけた7~9月期では、上乗せ効果は期待薄。エコノミストの実感との乖離がどの程度になるかも注目点だ。