海の見える病院。

一昨年の夏退院した

アルコール依存症の専門病院。


ここのところ、ずっと

ひとりで電車を使って行っていたから。

パートナーの車で行くのは久々。


帰り道 助手席で

呑気に海を眺めていたら

いろんなことが 浮かんでは消え

消えては浮かんできた。


もう15年前になるだろうか

当時勤めていた会社の

産業医さまの指示で

この病院を夫と一緒に受診した。


結果は「アルコール依存症ではない」

だった。


その時は 数値もさほど悪くなかったし

夫が状況説明で上司の“パワハラ”を

強調したから

そんな診断だったんじゃないかな~?

なんて今は思ってる。


だって 今 冷静に考えてみれば

あの時 既にもう 絶対 アル中だもん🤣


夫は仕事柄 とても弁の立つ人だった。

話術と勢いを駆使して

対応してくれた先生を押し切った。


たぶん 夫は 私に

“アルコール依存症”という

レッテルを貼られたくなかった。


だらしなくて

他人さまに迷惑をかける

自己管理出来ない妻。


自分が居るのに

なんの落ち度もないのに

何故?と。


夫を悪くは思えない。

私だって、そのレッテルを貼られるのは

嫌だった。

当時の私も

アルコール依存症は

そういうモノだと信じ込んでいた。


正直に言うと

アルコールに問題は有るが

優しかった父への想いと。


お酒のせいで争い事が絶えなかった

家庭で育った私の気持ちには

へだたりがあって。


私が“アル中”と呼ばれる訳には

いかなかった。


ただね あの時

固い頭を溶かす何かが起こって

治療を始めていたら。


生き方が変わって

夫は 今も元気で 生きていて

私も楽に息が出来る人に

なれていただろうか?


あの日 通った道

見たであろう風景が後ろに流れて行く。

結局 “もしも” なんて無いんだ。


だけど 今日私は生きている

そして 笑っている。


アルコール依存症の知識が

皆無だった人が

理解しようとしてくれて

今は隣でハンドルを握っている。


彼の奥さまが 夫と同じ病で

亡くならなかったら

この状況は  有り得ないこと。


ホントに 不思議。


そして私は

アルコール依存症患者だと

忘れない為に また病院に行く。

恥じるでもなく。


おごらないで 恐れないで 

穏やかな日々を過ごしたいから。