前日の続き

前日、夜中の2時過ぎまで呑んでいたのだが、縄文杉へは4時に起きて行こうと思っていた。時間にすればたった2時間の睡眠だけれど、これまでも富士山だとか、100キロだとかに参加している時もいつも朝方まで起きていてのチャレンジだったりしたので、今回も行けるだろうと思っていた。


朝、度重なる目覚ましの音にもまったく気づかず、起きたら朝7時半だった。慌てて出発の用意をする。縄文杉へは、環境保護のため、車で行ける場所は登山口よりももっと手前の場所までで、そこから定期的に運行されているシャトルバスに乗って40分ほど走って登山口まで連れて行かれる。


登山口からはトロッコ道といって、線路がしかれたごく平坦な道を歩き続けて、縄文杉のある山まで進み、そこから登山をして辿り着けるというのが一般的なコース。ただし、このトロッコ道のスタート地点に何時に出発しなければ無理という決まりの時間がある。


荷物をまとめて車でシャトルバスの待つ場所へ向かう途中、お弁当屋さんで登山弁当を買う。長時間になるので、登山弁当という名のおにぎりを持って行かなくてはならない。そこの売り場のおばちゃんに、今から縄文杉行くねんっていう話をしたらヒトコト「もう、バス終わってるで。バスは6時が最終やで。」と言われる。


膝から崩れ落ちそうなくらいショックだった。縄文杉のために屋久島に来たのに、縄文杉が観られない。昨日アホみたいに酒呑んでたしわ寄せが朝起きられないでバスに乗りそびれるという失態を呼んでしまった。唖然としながらおばちゃんになんか方法ないかなあと尋ねる。「白谷雲水峡からなら山道だけど規制が無いから縄文杉へは行ける」と教えてもらえた。


平坦なトロッコ道から縄文杉を観に行くという目的から、本格的な登山をしながら縄文杉を観に行くというハードな方向転換を強いられ、あわててレンタカーに乗り込み、昨日訪れた白谷雲水峡へと向かうことにした。


白谷雲水峡に到着したのが、朝9時。ここから登山でどれくらかかるのか全く未知数だけれど、縄文杉観られないで帰るほど残念なネタは作りたくないので、急ぎ気味に昨日歩いた白谷雲水峡を超えて行く。


30分近く歩いたところから、急に山道になる。昨日のようにサンダルでは行けない場所である。大きな石、自然に生えた根っこ、時折整備された階段、いろんな段差が懲りずに何度も用意されている。これを一つずつ、こなして前にすすんでいく。登っても、登ってもまだ終わらない。


文字だけで説明するのは難しいが、今回のコース変更によって、こんな感じである。

白谷雲水峡⇒山道⇒楠川分かれ道⇒トロッコ道⇒終点⇒山道⇒ウィルソン株⇒山道⇒縄文杉

楠川分かれ道という場所までくれば、ここからトロッコ道に合流して、平坦な道を抜け、縄文杉のある山へと辿り着くようなイメージになる。


白谷雲水峡から抜けて、楠川分かれ道までの山道も結構ハードで、登って降りてを繰り返してはまた繰り返す、何度繰り返したか判らないが、2時間ほどあるいたときに、トロッコ道へと辿り着くことができた。


トロッコ道はトロッコが走るくらいなので、割りと平坦である。デコボコも無い。ひたすら線路に沿って歩くだけである。いや、線路の間に木があって、その木の上を歩くだけである。この途中で登山弁当の二つあるオニギリのうち、一つだけ食べた。もう一つは、一応念のため残しておく事にした。同じ場所で休憩していたガイドさんから、ここまで来たペースなら行けると思うけど、充分に気をつけてくださいね。と言われる。いそがなきゃ。


で、トロッコの終点についたのが昼の2時くらい。立て看板を観ると、縄文杉を観るなら、お昼までに出発しないとダメですよ。って書いてある。やはりスタートの二時間遅れが響いている。もう2時だ。とはいえ、ここまで来て引き返しても縄文杉観てない残念な子でしかない。


迷わず縄文杉への最後の山道へ入る。山道を登って行く最中、出会うのは縄文杉を観たグループばっかり。どうにも後ろにも人が居ないし、完全に最終チームである。すれ違う人たちに何度「こんにちは」「すみません」と声をかけたか判らない。多分、この日縄文杉を観に行った日帰りの人たち全員に声をかけた気がする。なんせ最後だからね。


山道の間にも、大きな杉の木がたくさんある。後で知った倒れたという翁杉も観ていた。大王杉などを観ながら、まずは有名なウィルソン株へと到着。


ウィルソン株でいつもよりちょっと長めの休憩を取りながら、ウィルソン株の中に入ってみたり、その杉の木のでかさに恐れおののいたりする。株というくらいだから枯れているのだろうが、苔が生えていたりして、まるで普通に生きているような風格すら感じる。


残念ながら見上げたらハートに見えるといわれているが、僕の心は歪んでいるのかハートには見えなかった。ただ空が見えるだけである。でも、その大きさと株の中にできた溜まりの水はとても冷たく感動的で神秘的である。


休息後、最後に控えた縄文杉をめざす。あともう少し登って行けば出会えるはず。黙々とひたすら歩く。すれ違う際に出会うガイドさんたちは声を揃えて「今から行ったら帰り、帰られなくなるよ。ライトは持ってるの?」と助言してくれる。


ライトを貸してくれるわけでもなく、携帯のライトさえあれば多少暗くなったとしても大丈夫だろうとタカをくくっていた。つもりもないけれど、急いで戻ればまだ日の上がっているうちに戻れるだろうとさえ思っていた。


そして、夕方4時前。縄文杉に辿り着くことができた。


縄文杉は、約7200年前からある杉の木。僕が生まれるよりもずっとずっと前からここに生えている。おじいさんのように白く生気というよりも霊気を感じそうなほどにずっしりと構えている。そこらへんに生えている杉の木はすべてこのおじいさん杉の子孫なんじゃないかと思うほどに、大きく、そして上の方にはまだまだ青い葉をつけてそびえ立っている。


雄大な杉の木、遅刻してしまったけど出会うことができて本当に良かった。



本当は触れてみたかったけれど、昔と違って、今は縄文杉のふもとまでは行けないようになっている。手前にある展望台からしか観ることができないのはとても残念である。でも、そうしないと心無い人たちによって、杉の木の環境が悪くなってしまうのだろう。


この時点で4時を廻っている。6時くらいならまだ明るいだろうが、7時をすぎるとやばそうだ。3時間~4時間でちゃんと車のある場所まで帰り着くことができるだろうか。ひとしきり写真を撮影したり、休憩をした後、帰り支度をはじめる。



(ごめんなさい、細かく書いてたら長くなったので、つづく)