小学校4年生の頃かな、どっかから転校してきた女の子。学校は3クラスしかなかったけど、僕と同じ教室になり、たまたま僕の隣の席になった女の子。どこか田舎の女の子って感じがして、しかも転校してきたばかりでまだ誰とも仲良くなれたりしなかった。


小学生のコミュニティは小さいけれど、そのコミュニティはとても強くてなかなか外部の者は入って行くことができない。僕の実家でも自治会なんてのはあるけれど、新興住宅や新しくできたマンションの人たちのことはなかなか受け入れられない。そんな風潮と同じものだ。
隣に座ってた寡黙なつねちゃんと何がきっかけか判らないけれど話し始めて、いつしか仲良くなっていった。とはいえ、女子と喋るだけでワーワー言われる時期である。小学4年生なんてそんなもんだ。


その年の2月、僕はつねちゃんからチョコレートをもらった。人生10年ぽっち生きてきたなかで初めて身内以外からのチョコレートだった。僕はとても恥ずかしく、とても照れて受け取った。ありがとうすらちゃんと言えてなかったかもしれない。


3月には人生初のホワイトデーも体験した。つねちゃんの家の前で行ったり来たりしてなかなか呼び鈴を押せずにいたのは今でも覚えてる。結局、そこらへんでラジコンだかミニ四駆で遊んでた小さい子が押したらいいねんって言って勝手に呼び鈴を押してゴニョゴニョつぶやいてお返しをした。


それから数年、僕は地元の中学じゃなく奈良にある私立の中学高校一貫教育の学校に進学した。つねちゃんとは中学進学と同時に全く連絡なんて取らなくなった。


ある時、奈良の生駒駅で電車を待っているとつねちゃんが同じホームに居た。彼女の制服は奈良にある振興高校で進学校だ。相変わらず女子と喋るのは苦手だったけれど、なぜかその時勇気を出して声をかけた。その後に続く言葉なんて考えたりする事も無かったので、声をかけたものの会話がすぐに終わってしまう。高校生が夢見るようなロマンスもなんもなかった。


時は流れ、今日。


いつも仕事が遅いので最終電車に乗って地元の駅に着いた時、高校の時に観たよりもすっかり大人になってるつねちゃんが同じ電車に乗っていた。面影がうっすら残っているので、おそらくつねちゃんだろう。この駅で降りるってことは結婚してないのかもしれない。この時間まで働いてるのかな。

意気地がない僕は今回は声すらかけられなかった。もし別人だったらどうしようとか、びしっとした格好じゃなくヨレヨレの格好してるしなあとか、少ない時間でいろいろと声をかけない理由を考えだしてしまった。

でも今度もし同じ電車に乗ってるようなことがあれば声をかけてみようとおもう。あの時の僕のように。