Dさんは、認知機能の低下も少し見られる80代の男性です。
デイサービスに来ても、最初の頃はあまり話をしませんでした。
職員が声をかけても、
「うん」
「そうだね」
と短く答えるだけ。
表情も乏しく、周囲との関わりも少なくなっていました。
しかし、ある日、懐かしい歌が流れました。
その曲を聞いた瞬間、Dさんの口元が少し動きました。
職員が気づいて、
「Dさん、この歌、ご存じですか?」
と声をかけると、Dさんは小さな声で歌い始めました。
最初は本当に小さな声でした。
でも、歌が進むにつれて、少しずつ声が出てきました。
歌い終わったあと、Dさんはこう言いました。
「この歌、若い頃によく歌ったんだよ」
そこから、Dさんの会話が少しずつ増えていきました。
「昔、仲間と旅行に行った時に歌った」
「カラオケ大会に出たことがある」
「この歌は、母が好きだった」
歌は、記憶の扉を開くことがあります。
そして声を出すことは、呼吸、嚥下、表情、姿勢にも関係します。
Dさんは、歌の時間を楽しみにするようになりました。
歌う前には姿勢を正し、深く息を吸い、自然と表情も明るくなりました。
フレイル改善というと、筋力トレーニングばかりを想像しがちです。
でも、歌うこと、笑うこと、人と話すことも、立派なフレイル予防です。
Dさんにとって歌は、体と心をもう一度動かすスイッチになったのです。
フレイルは、ある日突然始まるものではありません。
「歩くのが遅くなった」
「食べる量が減った」
「外に出なくなった」
「会話が少なくなった」
「転ぶのが怖いと言うようになった」
こうした小さな変化の積み重ねです。
でも、早く気づけば、変えることができます。
大切なのは、
「歳だから仕方ない」
で終わらせないこと。
体は、何歳からでも反応します。
心も、何歳からでも動き出します。
フレイル改善とは、ただ筋肉を鍛えることではありません。
その人の中にある、
「まだできる」
「もう一度やってみたい」
という力を引き出すことなのです。
Cさんは、80代の女性です。
一度、自宅の廊下で転倒してから、歩くことが怖くなっていました。
転倒そのものは大きな怪我ではありませんでした。
しかし、その日からCさんの生活は大きく変わりました。
トイレに行く時も慎重になり、外出はほとんどしなくなりました。
ご家族が外に誘っても、
「また転んだら迷惑をかけるから」
と言って断るようになりました。
フレイルは、体だけの問題ではありません。
「怖い」
「迷惑をかけたくない」
「自信がない」
こうした気持ちが、体の動きをさらに小さくしてしまいます。
デイサービスでは、まずCさんに安心してもらうことから始めました。
いきなり歩行訓練をするのではなく、椅子に座ったまま足の裏を床につけてもらい、
「足の裏で床を感じてみましょう」
と声をかけました。
次に、太ももに手を当ててもらい、
「ここに力が入っていますね」
と、自分の体を感じてもらいました。
そして、職員がそばについて、ほんの数歩だけ歩く練習をしました。
最初は3歩。
次は5歩。
そして、部屋の端まで。
ある日、Cさんは歩き終わったあとに、少し照れたように笑いました。
「なんだ、私、歩けるじゃない」
その日から、Cさんの表情は変わりました。
数か月後には、施設の中だけでなく、玄関の外まで歩く練習をするようになりました。
そして、ご家族にこう話したそうです。
「暖かくなったら、また近所を散歩してみたい」
この言葉こそ、フレイル改善の大きな一歩です。
歩く距離が伸びたこと以上に、
「もう一度やってみたい」
という気持ちが戻ったことが、とても大切なのです。
Bさんは、70代後半の男性です。
奥様を亡くされてから、食事への関心が薄くなっていました。
朝はパンを少しだけ。
昼はお茶漬け。
夜は簡単な麺類。
体重も少しずつ減っていきました。
ご本人は、
「食べたいものがないんだよ」
と話していました。
ご家族は心配していましたが、本人が嫌がることは無理にできません。
ただ、食事量が減ると、筋肉も落ちます。筋肉が落ちると、歩く力も落ちます。歩かなくなると、さらにお腹も空かなくなる。
まさに、フレイルの悪循環です。
デイサービスでは、まず「たくさん食べましょう」とは言いませんでした。
最初にしたのは、食事の前に軽く体を動かすことでした。
足首を動かす。
膝を伸ばす。
歌を歌いながら、深く呼吸する。
体が少し温まると、不思議なことに表情も変わってきます。
そして、食事の時には職員がこう声をかけました。
「Bさん、今日はこのおかず、いい香りですね」
「一口だけ、味を見てみませんか」
無理に食べさせるのではなく、食べることへの興味を少しずつ戻していきました。
数週間後、Bさんは食事の時間にこう言いました。
「今日は味噌汁がうまいな」
その一言を聞いた職員は、心の中でガッツポーズをしました。
さらにしばらくすると、Bさんは他の利用者さんと食事中に会話をするようになりました。
「昔はよく魚を焼いて食べたんだよ」
「女房が作る煮物がうまくてね」
食事は、ただ栄養を入れるだけではありません。
記憶を呼び起こし、人とのつながりを戻し、生きる力を支えるものです。
Bさんはその後、少しずつ体重も安定し、歩行時のふらつきも減っていきました。
体験談①
「歳だから仕方ない」と思っていたAさんの変化
Aさんは、80代前半の女性です。
以前は買い物も自分で行き、近所の方とのおしゃべりも楽しみにしていました。ところが、ある時期から外に出る回数が少しずつ減っていきました。
最初は、本人もご家族もこう思っていました。
「まあ、歳だから仕方ないよね」
ところが、変化は少しずつ進んでいきました。
歩くスピードが遅くなり、玄関の段差を越える時に不安そうな表情をするようになりました。食事の量も少し減り、以前は楽しみにしていた会話にも、あまり入ってこなくなりました。
ご家族が気づいたのは、ある日のことです。
買い物から帰ってきた娘さんが、
「お母さん、ちょっと一緒に外を歩こうか」
と声をかけると、Aさんはこう言いました。
「転んだら怖いから、今日はやめておく」
その言葉を聞いて、ご家族は初めて、
「これはただの老化ではないかもしれない」
と感じました。
デイサービスに通い始めた頃のAさんは、椅子から立ち上がる時にも手すりを強く握っていました。表情も少し硬く、運動の時間になると、
「私はもう無理よ」
と笑いながらも、どこか諦めたように言っていました。
そこで最初に行ったのは、難しい運動ではありません。
椅子に座ったまま、足踏みをする。
太ももに手を当てて、「今、ここを使っていますよ」と意識してもらう。
歌に合わせて、ゆっくり手を動かす。
立ち上がりも、回数ではなく「安心して立てた」という感覚を大切にしました。
すると、2週間ほどで小さな変化が出てきました。
運動の時に、Aさんが自分から足を動かすようになったのです。
1か月ほど経つと、椅子から立ち上がる時の不安が少し減り、表情にも明るさが戻ってきました。
ある日、Aさんはこう言いました。
「先生、私、まだ歩けるんですね」
この一言は、とても大きな意味を持っていました。
体力が戻っただけではありません。
「もう無理」と思っていた心が、
「まだできるかもしれない」に変わったのです。
フレイルの改善で大切なのは、筋力だけではありません。
本人の中に眠っていた自信を、もう一度取り戻すことです。
令和8年2月28日
令和8年2月17日
【ミュージック•デイ あした音】
・「ただ預かる」デイサービスではなく、「生きがいを見つけ、輝ける場所」を意識しています。
• 個々の状態や好みに合わせ、音楽・運動などのプログラムを柔軟に組み立てているため、誰でも安心して楽しめます。
・特に「寺山式 認知機能改善プログラム」を導入している点は、他にはない独自の強みです。
【あした音 公式ページ】
https://ashitane3.com
【ライン登録】
https://asitane9.com/Page.aspx?id=P7bb6ba9









