第三部

42帖『匂の宮(にほふのみや)/匂兵部卿(にほふひゃうぶきゃう)』

巻名は、明石の中宮の子匂の宮が「兵部卿」であることに由来

 

◆薫14歳~20歳、右大臣夕霧(46歳)、明石の中宮(39歳)◆

<物語の流れ>

    右大臣夕霧 →正室雲居の雁との子、長女は一宮(東宮)の正室、次女は二宮の正室 →側室藤典侍(ないしのすけ)の娘六の君 →落葉の宮(強引に六条院丑寅の町に)の養女に

    薫の中将・・・柏木と女三の宮との不義密通の子 →冷泉院の猶子(ゆうし)に →14歳で元服、右近の中将に →19歳で三位の宰相兼右中将に

    匂の宮・・・明石の中宮と今上帝の子、15歳

 

※品位(ほんい

 親王、内親王の位階、一品から四品まで、臣下の位階と同様、位に応じて田地を支給される

※中将(ちゅうじゃう)

 警備、警護を担当する近衛府(このゑふ)の次官、参議で兼任する者を「宰相(さいしゃう)の中将」、蔵人(くろうど)の頭(とう)で兼任する者を「頭の中将」、また三位で中将である者を「三位の中将」、いずれも摂関家の子弟の出世コース。

 

<書き出し>

「光(ひかり)かくれたまひにしのち、かの御影(かげ)に立ちつぎたまふべき人、そこらの御末々(すゑずゑ)にありがたかりけり。おりゐの帝(みかど)をかけたてまつらむはかたじけなし。 当代(たうだい)の三の宮、その同じ御殿(おとど)にて生(お)ひ出でたまひし宮の若君(わかぎみ))と、この二所(ふたところ)なむ、とりどりにきよらなる御名取りたまひて、げにいとなべてならぬ御ありさまどもなれど、いとまばゆき際(きは)にはおはせざるべし。」

 

 (光の君が亡くなられたあと、その御輝きを継いでおなりになる人は、たくさんの御子孫の中にいらっしゃりそうにもないのでした。譲位された帝(冷泉院)をどうこう申し上げるのは恐れ多いことです。当代(今上帝)の三の宮(第三皇子、匂の宮)、その同じ御殿で生まれ育たれた宮(女三の宮)の若君(薫の君)と、この二人が、それぞれに美しいという評判を取られて、なるほど人並み優れた二人の御容貌ではあるが、大いに見るからに眩しいというほどではいらっしゃらないようです。)