44帖『竹河(たけかは)』

巻名は、藤侍従の所の集いで唄う催馬楽(さいばら)「竹河」に由来

《和歌》「竹河の はしうち出でし ひとふしに 深きこころの そこは知りきや」(薫の中将)

 (竹河を謡いましたあの文句の一端に、私の深い心の内はお分かりくださいますでしょうか)

 ※姫君を慕う気持ちを汲んでほしい、の意。

 

《和歌》「竹河に 夜をふかさじと いそぎしも いかなるふしを 思ひおかまし」(藤侍従)

 (竹河を謡って夜更かしをしないで帰られたのはどういうおつもりと考えたらいいのでしょう)

 

◆薫14、15歳~23歳◆

<物語の流れ>

初めに、光源氏一族ではなく髭黒太政大臣一族に仕えていた古女房の問わず語り(玉鬘の話)と作者が記している異色作

   玉鬘 →娘の身の振り方に頭を悩ます→娘大君(おおいきみ)を冷泉院に、中の君も尚侍(ないしのかみ)として入内

   藤侍従・・・玉鬘の三男

薫 →藤侍従と友人で、蔵人の少将ととともに玉鬘邸に出入り →宰相の中将から中納言へ

 ※『源氏物語』は、各巻毎に話を纏め、短編を積み重ねていく構成、駅伝のように襷を渡しながら物語を展開させていく手法

 

<書き出し>

筆者紫式部の前置き

「これは、源氏の御族(ぞう)にも離れたまへりし、 後(のち)の大殿(おほいとの)わたりにありけるわる御達(ごたち)の、おちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫のゆかりにも似ざめれど、かの女どもの言ひけるは、『源氏の御末々に、ひがことどものまじりて聞こゆるは、われよりも年の数(かず)積もり、ほけたりける人のひがことにや』などあやしがりける。いづれかはまことならむ。」

 

 (これは、光源氏の御一族にも遠く離れていらした、後の太政大臣(髭黒の大将のこと)一族に仕えていたおしゃべりな女房たちで、生き永らえ残った者たちが、問わず語りしたもので、紫のゆかりの人々の話に似ていないが、彼女たちが語ったことには、「光源氏の一族については、間違ったことが混じって言われているのは、私より年が加算でぼけた人の間違っていることがあったのでしょうか」など疑問に思っていました。どちらが本当なのでしょうか。)

 

 ※「に-や」は、断定の助動詞「なり」の連用形「に」+疑問の係助詞「や」、~であろうか、の意

 ※光源氏の一族の話は、紫(紫の上)ゆかりの女房たちが語ったもの、髭黒の一族の話は、髭黒家ゆかりの女房達の語ったもの、という。