日本維新の会の藤田文武共同代表が、自身を批判的に報じた『しんぶん赤旗』の記者の名刺画像をSNSに公開した問題は、単なるビジネスマナーの逸脱として片付けられるべきではない。これは、公権力を持つ政治家が、批判勢力である報道機関に対し、個人の情報を武器に威嚇し、攻撃を扇動した、民主主義の根幹に関わる事態である。

 藤田氏は、名刺の記載情報が「公開情報」であるとして、行為の正当性を主張している。確かに、編集部の住所や氏名はウェブサイト等で確認できるかもしれない。しかし、名刺は、連絡という特定の目的のために、特定の相手との間で「信頼関係」に基づき交換されるツールである。その情報を、個人的な批判への報復として、不特定多数に拡散し、「攻撃の標的」として提示する行為は、名刺交換の慣習を一方的に破壊する行為に他ならない。

 現に、名刺公開後、当該記者に対して業務を妨害するほどの大量のメールや電話が寄せられているという事実は、藤田氏の行為が意図的か否かにかかわらず、批判者を攻撃へと誘導する「犬笛」の役割を果たしたことを示している。公党の共同代表という強い発信力を持つ立場が、このような形で個人の取材者に圧力をかけることは、報道の萎縮を招き、民主主義に不可欠な「権力の監視機能」を著しく損なうものである。

 政治家は、情報発信力を私的な感情や党利党略のために悪用してはならない。批判に晒されたとしても、公人として政策や事実をもって反論するのが筋であり、取材者の個人情報を晒すという手段は、倫理観の欠如と、批判を受け入れる度量のなさbを露呈する傲慢な振る舞いと言わざるを得ない。

 藤田氏は直ちに名刺画像を削除し、当該記者と報道機関に対して謝罪すべきである。そして、この事態を機に、全ての公人が、個人の情報が持つ意味と、その利用における責任を深く再認識し、権力と報道の関係において、節度ある行動規範を確立することが求められる。さもなくば、取材活動への不当な圧力が横行し、私たちの社会の健全な情報流通が妨げられることになるだろう。