「東京一極集中を是正せよ」と、日本維新の会は自民党に強く実現を迫る姿勢を見せている。だが、冷静に考えれば奇妙な話だ。東京は首都直下地震の危険があるからといって、より巨大な地震が想定される南海トラフの被災圏内に中枢機能を移すのは、防災の常識からすれば明らかに逆行している。
大阪は震度6強、津波3〜5メートル、液状化の危険性も指摘される地域である。つまり、南海トラフ地震では「被災側」に含まれる。もし東京と大阪が同時に機能不全に陥れば、国全体の統治と救援は麻痺しかねない。それでも「大阪副首都」が政治的に進むのはなぜなのだろうか。
第一にこの構想が「防災対策」ではなく「経済・行政の分散」として扱われているため、第二に他党も「地方振興」には賛成の立場で、明確な反論をすれば「大阪軽視」と受け取られる、第三にメディアも政治的摩擦を避け、地域活性の文脈で報じるにとどまっている、などが理由であろう。
結果として、「大阪は危険ではないか」という最も根本的な問いが、公の議論から抜け落ちている。本来、首都機能の分散を真剣に考えるなら、南海トラフの震源域から離れた日本海側や内陸部(たとえば京都北部・福井・長野・岡山北部など)を検討すべきだろう。
防災は「地元への配慮」や「政治的均衡」で決めるものではない。国の存続を守るための合理的判断である必要がある。「副首都構想」が真に国のリスク分散を目的とするなら、まず問うべきはどこが安全かという一点である。防災を置き去りにしたままでは、「第二の東京」をつくるだけで、第二の危機を招くことになりかねない。