飛騨高山の美しい街並みがテレビにうつるたびに、この古き良き町並みから電線が消えれば、どれほど風情が増すだろうと思う。同様に、京都の竹林も、電線の存在がこの古都の静かで美しいい景観を損ねている。確かに、地中化が進んでいる場所もあるのだが、それでも電線が無造作に空を走る場所が目立つのが現実だ。

日本の伝統的な町並みや自然美には、無駄なものが介入することなく、風景そのものが持つ情緒や美しさが重要だと思う。電線や電信柱があることで、これらの景観が台無しになってしまうのは実に惜しい。都市や地域の特徴を際立たせ、観光資源としての価値を高めるためには、こうした景観改善が急務である。

自治体の観光担当者には、より高い感度を持ってその地域の景観に配慮してもらいたいものである。観光に訪れる人々が、ただの「観光地」ではなく、心から感動する風景に出会えるような工夫がなされてこそ、その土地の真の魅力を伝えることができるのだと思う。

日本は市街地に行くと電柱がこれでもかと立てられ、空を見上げるとクモの巣のように電線が張り巡らされている。前近代的な発展途上のアジアの一国という印象をぬぐえない。しかし、すでに日本全国に電線が張り巡らされているので、今更それらを地中化していくことは不可能に近い。そうであれば、せめて有名な観光地や風情の残る地域、道路が狭くて電柱があると危険な道だけでも地中化を考えてほしいものである。