石破首相は、派閥政治と裏金問題にまみれた旧来型自民党の力によって、何の不正もないまま引きずり下ろされた。国民が否を突き付けたはずの派閥の論理が再び支配し、良識ある少数の議員は抗しきれなかった。
「党を分断させてはならない」、「自民党を一つにまとめねばならない」との言葉は美辞麗句に過ぎない。実態は、派閥政治を温存し、数の力で物事を決する古い自民党の姿への回帰にほかならない。本当に必要だったのは「党の分断」、すなわち派閥政治の解体であった。
政権交代を経ずして、自民党一党支配の腐敗政治を改め、二大政党制を根付かせることはできない。野党に政権を任せる不安はあろうとも、何事にも始まりはある。目先の利益に飛びつき、子や孫に再び旧来の政治を押し付けることは避けるべきだ。
石破首相は、裏金議員や派閥政治を担う当事者たちに責任を取らせた上で、思う存分に改革を断行し、その後に解散総選挙を行うべきだった。それこそが国民に判断を委ねる王道であっただろう。結果として派閥の残党が選ばれるのであれば、それは民意である。あとは、石破氏も、政治を浄化したいと考える国民も、深く関わらなければよい。
石破氏は最後の最後まで、自分の信念を貫くことが一度もできなかった。派閥議員たちの顔色をうかがいながら、全てが妥協であった。最後の解散総選挙も途中で萎えた。中途半端こそ最悪の結果をもたらすことを、彼は最後まで悟れなかった。