北海道知床で再び、ヒグマによる死亡事故が報告された。被害者の下半身の損傷は甚大であり、助かったケースでも顔や頭の半分近く、あるいは手や足を失う例がある。襲われると、けがの程度がかなりひどいという。鋭い爪と強靭な腕力、食いついて引き裂く力は、他の大型捕食動物を凌ぐ。ライオンやヒョウが獲物を窒息させてから捕食するのに対し、ヒグマは生きたまま噛みついて食べていくのだという。その恐怖と痛みを家族に携帯で伝えながら息絶える事件が海外でも起きており、ヒグマが人間にとって現実的な脅威であることは否定できない。

しかし、マスコミではその危険性が十分に伝えられない傾向がある。動物愛護の視点との均衡を取るあまり、事実に基づく警告が後回しにされている感も否めない。

近年、ヒグマの個体数増加や生息環境の変化により、人間とヒグマの住み分けは困難になり、被害や死亡事故が増加している。単に指をくわえて見ているだけでは、悲劇は繰り返される。行政、研究者、地域住民が協力し、現実に即した防護策や生活環境の調整を進めることが喫緊の課題である。