ストリートピアノが街に増えてきた。駅の構内や展望室、公園の一角など、人の往来が多い場所に置かれ、ふとした拍子に音が耳に届く。道ゆく人が足を止め、演奏に聴き入る光景は、たしかに微笑ましいものでもある。

ただ、その一方で、静けさを求めている時に、不意に流れ込んでくる音に戸惑うこともある。音楽は本来、誰かの心に寄り添うもののはずだが、公共の空間であまりにも主張が強いと、少し違うものに映ってしまう。

もし、駅構内にピアノが入った防音ボックスのようなものが置かれていたとして、それでも弾きたい人がどれだけいるのだろう。演奏すること以上に、「他人に聞かせること」に意味があるのではないか。そこに少しの虚栄が混じっているようにも思える。

もちろん、すべての演奏がそうとは言わない。ただ、音の届く先にいる人の気持ちにも、ほんの少しの想像力があれば、もっと優しい風景が広がるのではないかと思うのである。