博士号、博士号というが、3年間、あるいはそれ以上研究に専念し、単位取得満期退学者となる人も大勢いる。むしろ私には博士号を取ったと聞くと、簡単で適当な大学だったんだなあと思う。

 博士論文にもピンからキリまである。もし「博士号」がそれほど大事で重視されるのであれば、誰も知らないような簡単な大学の大学院に入ったほうが簡単に取れるだろう。

 私が行った大学院の研究室の教授たちは学会の幹部たちばかりで、その分野において日本では最も有名な人たちが集まっていたが、当時一人も博士号を持っている人はいなかった。教授たちは、博士号は一生研究し、その集大成をまとめて最後に取るもので、むしろ若くして持っていることは恥ずかしいことと話していた(現在は皆亡くなったが、亡くなる前に皆博士号を取った)。40年以上前の話なので今は状況が異なっているのかもしれないが、少なくとも「なぞり論文」を博士論文として認めたりすることだけはやめなければいけない。日本の学術論文の質が落ちないことを期待したい。