フジテレビの「めざまし8」で、介護施設において職員が施設利用者から手を振り払われるなどの暴力や理不尽な暴言、ハラスメントを受けて大変だという内容を伝えていた。認知症になると妄想が多くなり怒りの感情もコントロールできなくなるので、このような症状は自然なものである。その症状を暴力とかハラスメントなどと、「悪」の概念を含む言葉で定義づけをするのはひどいと思う。フジテレビは、このことを世界に伝えられてもよいだろうか。認知症の症状が出ている利用者は好きでやっているのではない。ふと我に返った時に自分の症状に涙し、「暴力をふるってはダメだよ」と職員から注意されたことのある利用者は自分が暴力をふるったということを認識してかなりのショックを受けるだろう。高齢者は今後さらに増え、多くの人がこのようになる。日本は今後暴力をふるい暴言をはく悪い人でいっぱいになるという思考の人が、世論を作るテレビ局の責任ある地位にいることは許されないと思う。

 ちなみに「暴力」について厳密にいうと、「他者の身体や財産などに対する物理的な破壊力」や、「合法性や正当性を欠いた物理的な強制力」ということになっている。認知症の利用者が職員の手を振り払ったり足を軽くけったりする行為に破壊力はないし、合法性や正当性を欠いたものでもない(生物学的な脳のしくみで起きる症状である)。

 おそらくフジテレビの1~2人の素人が話し合って決めて、このような番組内容にしたのだろう。コメンテーターも、利用者のそのような行為は許されない旨の発言をしていたが、私は許されないのではなく利用者がかわいそうでならない。認知症の症状ができるだけ出ずに落ち着いて暮らせるように職員は対応の技量をもっともっと上げていかなければいけない。テレビ局において、全国に伝える内容の方向性を決定するような地位の人は、大学教授レベル以上の専門性や幅広い知識、思考力、判断力、客観性などが求められる。

 介護についていえば、認知症の人を相手にすることは、症状にもよるが一般の人が家庭で見るのはとても難しいレベルである。会話も成立せず、突然外出しようとするなどの行動をとるためにずっと見ていないといけない。家の中をふらふら歩くから手でささえてやると、バシッと振り払いながら「やめて~」と大声を出し、手を離すと転んで顔から床に倒れ、眼鏡が割れ顔面が腫れる。おそらく家族は2~3週間で耐えられなくなるだろう。だから、それを専門的に仕事としている施設にお金を出して依頼しているのである。施設の職員はそのような利用者を介護する仕事であり、基本的には普通の健康なお年寄りをお世話することはない。それを仕事にしておいて、「たたかれる」、「理不尽なことを言われる」などと文句を言うのはおかしなことだ。それを仕事にしたくないなら、職を変えればよい。当たり前の論理である。

 今後のことについていえば、介護職員のレベルを高くし(どのような利用者にもうまく的確に対応できるような訓練をうけて免許制にする。一級免許や二級免許など)、給料もそれに見合うように公務員程度まで上げ、簡単に採用されるからと安易な気持ちでやって来る人の採用を防ぐことが、施設職員やこれから増え続ける利用者のどちらにとってもベターであろう。

 ベストは、認知症の有効な予防薬や治療薬が早く開発されることだ。世界の研究者は、がんの治療薬と共に何とかできないものだろうか。