ジャニーズ事務所の会見は、最も身近な身内を社長にしたり、ビッグローブと同じく一番詳しい副社長を辞任させて逃がしたり、話が二転三転したり、いいわけをして自分を正当化しようとしたり、質問から離れて自分たちに都合の良いことを話したり、これからもジャニー喜多川氏の名前を看板としてやっていくと言ったり、多くの所で反省の希薄さが感じられた。

 特に、責任逃れ、ずるさが強く感じられたのは、当時は「うわさ」として喜多川氏の行為をよく聞いたという部分である。これは東山氏も井ノ原氏も繰り返し述べていた。この「うわさ」というのがキモで、意味を調べると「内容が事実であるかどうかを問わず、言い交されている話」とある。一般的なイメージとしても、「嘘の話。作り話」という感じではないだろうか。被害者が数千人と言われているのに、二人がジュニア時代、被害にあった仲間から直接話を聞いたことが一度もなかったとは考えにくい。もし直接被害者から話を聞いていたとしたら、それについて事実の存在をあやふやにするような「うわさ」という言葉を使うことには他意が感じられる。「被害を直接聞いたことがある」というのが適切であり正確だろう。自分が直接見ていないことだから「うわさ」と表現するのであれば、ニュースも大学での講義も人との会話もすべてダークなイメージの「うわさの話」となる。うわさではなく、情報を得ていたのである。

 さらに言えば、自分は性加害をしていたかの質問に対し新社長は、初めは「やっていない」と答えた(のちに、やったかもしれない、幼かった、時代が・・・と認める)。1つ嘘が言える人は、いくつでも言える。新社長の言葉の全てが疑わしくなってくる。

 昨日の会見での4人の話は、建前や立派なことは言わないといけないから当然話すのであるが、4時間も話しているのでごまかしきれず、どうしても説明の端々に「逃げよう、逃げよう」という本音が表れていた。どこかの大学の准教授も話してたが、本当に前途多難だと思う。このようなジャニーズ事務所に、本丸であるテレビ局によるジャニーズ忖度(ジャニタレ優遇措置)やエンターテイメント業界全体の健全化などを期待した先の提言は、あまりにも無謀で現実離れしているものだと言えるだろう。ジャニーズ事務所にはできない。ではどこがやるか。できそうなところはない。かくして、ジャニーズ事務所とテレビ局の癒着や不公平・不公正な営業方針は続く。

 政治にしても、メディアにしても、企業にしても、日本には自浄作用がない。ばれてもやり続ける。唯一、日本社会での不正や違法行為を直せるのは、海外メディアだけであろう。日本は海外からの指摘には、異常に弱いのである。