WBCの日本代表監督である栗山氏が称賛されているが、私の見方は異なる。
今回の日本代表メンバーは一人一人の能力が高く、これまですばらしい結果を出してきている本物の選手ばかりである。だから、個人が自分の力を出せれば、勝ち進んでいける状況であった。したがって、監督の唯一の仕事は、彼らが自分の力を普段通りに発揮できるような「雰囲気づくり」だったと思う。
選手達ができるだけ緊張しないような環境を、彼は作っただろうか。彼のスタンスは、緊張してもその中で力を出すように励ましたり、「信じている」と言ったりするというものだった。緊張すれば力が半減するし、「信じている」などと言うのは圧力をかけてさらに緊張させることになる。でも、それによって優勝したじゃないかと言われるだろうが、そうではない。そうしたから優勝したのではなく、そうされても優勝できるくらいに今回の日本代表メンバーの技能が高く、かつ緊張しないように明るく楽しい雰囲気づくりを選手たち自身がみなでなんとか作ったからだと思う。監督も、牧選手や山川選手、大谷選手のような明るくて軽やかに前に進んでいくような性格や方針の人であったら、もっと楽に優勝できたのではないだろうか。
今回のメンバーが全員技能の高い選手だったので何とか勝ったが、そうではない場合、緊張はさらにチームとしての力を落とし、決定的な致命傷となるだろう。野球もサッカーも、次回の監督を選ぶ際には、雰囲気ではなく様々なことを現実的に考えて慎重に決めてもらいたい。
〈追記3/29〉 栗山監督について、最後の締めくくりとして「10億もらってもできない仕事かも」と話したことが報道された。記者会見ではなく、食事中にコーチと交わした会話だという。このような会話を公にするコーチも問題であるが、監督がこのような考えをしていたことや他人にこのような話をすることは非常に問題であった。これを聞いた若いプロ野球選手や少年たちは、「WBCとはそんなに大変なところなら絶対に出たくない」と、目標にすることをやめてしまう人も少なくないだろう。私が選手として出られる立場にいたとしたら、私はそんなに苦しみたくないから出たくない。大谷選手のように「次のWBCも出たい」と思えるような仕事をし、「とても楽しかった」と思えるような人物が監督にふさわしいと思う。少なくとも、そう思えない人であったとしても将来の子供たちや若いプロ野球選手たちのためにも、プライベートの場とはいえ最高責任者として死んでも口にしてはいけない言葉であった。