日本での「社会常識」(ここでいう「社会常識」とは、社会におけるマナーや暗黙のルールのこと)では、年下の者が年上の者に「ため口」で話すことは失礼なことだとされている。実際、それをやっている人はほとんどいないだろう。もちろん、家族間や芸歴年数を重んじる職場、不良や犯罪者など例外はあるが、一般的にはありえないことである。
しかし、病院やクリニックに行くと、年下の医師がため口で話しかけてくることがけっこうある。私の経験上では、3割以上の医師はため口で話しかけてきた(そのような医師は高圧的で自己満対応だった)。
医師も大人の社会人なのであれば、せめて最低限の社会常識は守らなければいけない。そうしなければ、他者に不快感を与えたり迷惑をかけたりすることになる。もしこのような人で社会がいっぱいになったら、社会は混沌とし、うまく機能しなくなる。社会の厄介者にならないよう頑張ってもらいたい。まずは性格(態度や考え方)を改めることが先なのだろう。そうすれば自然と言葉遣いも普通にできるようになると思う。
話が少し逸れるが、私には医師がそうなる理由もわからなくはない。例えば大学院を修了後、講師や准教授になって研究だけをして大人になった人などはあまり社会に出たことがなく、その分野では活躍しているが一般人と比較すると変わった人がたくさんいる。私が大学院にいた頃、この人が社会に出たら生きていけないだろうなあと思う助教授(当時)や教授にもたくさん会った。一例を挙げると、早朝院生室の前で教授と会った時、「おはようございます」と笑顔で言ったら、笑いながらモジモジと恥ずかしそうにして困っているようだったので、気まずくなって私から「失礼します」と言ってその場を去った記憶がある。学会での挨拶はできても日常の挨拶をしたことがあまりなく、対応がわからなかったように見えた。そして1限目のゼミになると学者らしく豹変し、こんなのはだめだという意味で、学生が書いてきたレジュメを本人の顔に投げつけていた(現在はないだろうが当時は皆厳しかった。うちの大学だけ?)。もしかしたら、医師も研究者と境遇が同じなのかもしれない。学校で医学だけに専念し、そのまま絶対的な立場であり思った通りにすべてが通る「医師」として病院に勤務するために、一般の社会人から見ると「社会常識がない」「マナーを知らない」となるのかもしれない。研究者はそのまま主に大学に身を置いて一生を過ごすからよいが、医師は卒業すると一般人と接する仕事に就くことになる。だから、やはり医師は社会常識を身につけなければいけない。教員になると、社会人としてのマナーや接し方(保護者や他教員、地域の人々)、カウンセリング方法などの研修が数十年にわたって続く。医師にもそのような研修制度があるのだろうか。医師になったら後は個人にすべて任せているとしたら、制度を変えたほうが良いだろう。