出川氏の充電旅の挿入歌は、ビッグダディの家族を長期取材した人気番組の挿入歌で、いいかえればビッグダディの番組が育ててきた曲でもある。

 あるビールのCMでは、数十年間にわたりニッポン放送のオールナイトニッポンが使ってきた曲が使われている。これを見た人は、だれでも「なぜオールナイトニッポンの曲を使うのだろう」と不思議に思ったのではないだろうか。

 別に法律違反でもないのであるが、他力本願の番組やCMを全国に流すことに、恥ずかしさや罪悪感はなかったのだろうか。

 ここ十数年で、テレビ局(情報番組やバラエティ番組等)と政治家は、開き直った傲慢な態度で「なんでもあり」を堂々とやってのけるようになってきた感じがするのは私だけであろうか。私は、恥ずかしいと思う日本人の気持ちが、長年日本における道徳や正義、思いやりなどを支えてきた面もあると思っている。世代交代で徐々にそれも失われ、「多様性」や「自己実現」の名のもとに混とんとした無秩序の社会に変化しつつあることに危惧を抱いてしまうのである。