自民党は、防衛費の増額を目指しているようだ。周辺国が危険な行動を続けているため、それらに対抗、あるいは抑え込むためなのだろう。

 しかし日本が軍備を増強することで、本当に相手は「日本が軍事的に強くなってしまい、このままでは目的が達成できないから領土拡大や侵略はあきらめよう」となるだろうか。

 逆である。相手国は自分達の願望を達成するために、戦争で日本やアメリカに負けないために、さらに軍事力の状況に努力するだろう。当たり前の話である。そうなったら、日本も当初の目的を達成するためにさらに軍事力の増強に努めることになる。これの繰り返しとなる。それがわかっていて、日本は軍事力を今からさらに増強しようとする。不思議だ。日本が防衛費を増額する本当の目的が他にあるのではないかとさえ思えてくる。

 広島で行われた平和記念式典の際、核戦争を防ぐには軍拡競争ではなく平和的な対話しかないと国連事務総長が話していたが、これは単なる理想でも形式的な文言もなく、まさに現実的な唯一の方法であろう。核戦争や大きな戦争が行われた時のことを想像すると、対話においてはある程度の妥協も必要となるのである。しかし、その際妥協した側は相手国の今後の行動についての担保が必要だ。世界のすべての国で戦争回避のための法を作り、監視するシステムも同時に必要である(破った場合には国連軍による原状回復を行う)。それがなければ、妥協も無意味となってしまう。いくら「不可逆的」などという言葉をつけて二国間だけで約束できてもどうなるかは皆がわかっていることだ。

 この実現のために国連での話し合いをリードし方策を提案していくにふさわしい国は、唯一の被爆国であり、平和憲法を守り続けてきた国であり、ある程度世界中から信頼されている日本ではないだろうか。ロシアや中国などの国々のことも考えながら、中立的な立場で平和を貫く意思を示し続け、話し合いをリードしていけそうな感じがする。世界捕鯨委員会での長年にわたる日本の努力を見ていると、本気を出せばその実現のための力は日本にあると思う。

 世界のすべての国が参加して、戦争や軍拡を防ぐための共通のルール、法を決め、みんなで監視し、対応していくシステムが作れるかどうかに全てがかかっている。とりあえず今すぐ日本がやるべきことは、「軍拡のいたちごっこをやめる」ということだろう。