先日、ひょうが降った後に光芒が地上に差し込んでいた。作家の開口健氏が、レンブラント光線と呼んでいたことを思い出した。そのつながりで、私が若い頃に開高氏と小田実氏の対談を見に行ったこと、大学で小田氏から講義を受けたこと等がよみがえってきた。
小田氏は反戦、反核運動をリードしてきた作家で、べ兵連を結成しデモの先頭に立つなど活動家でもあった。大学での彼の授業が休講になった時に黒板に大きく書いてあった「ダイ・インのため休講」という文字は、まだ子供だった何もわからぬ私になぜか鮮烈な印象を与えた。彼は講義において、日本の核ミサイルの実態や日本の徴兵制の裏側、マスコミや政府による世論操作などを教えてれ、非常に興味深かった。なぜ彼が公になっていないことを知っているかと言うと、東大での同級生が当時の防衛庁幹部であったり官僚であったりするなど日本の中枢にいる人達と親交があったため、個人的に話を聞けるということだった。
小田氏は、民主主義(デモクラシー)となった、小さな人間(デモス)の力(クラトス)が社会を変えると信じていたという。国民の意思が反映されにくい現在の似非民主主義の政治体制(政党や派閥による拘束など)を、政治家自身が変えるわけもない。小田氏の言うように、社会をすぐに変える良薬というものはなく、やはり国民一人一人が多様な情報を得て、流されることなく自分の頭でよく考え、そして地道に「実行」するしかないのかもしれない。たしかに先は長くゴールは見えないが、結局それが一番の近道のような気がしている。