毎年大晦日に放送されていたダウンタウンの「絶対に笑ってはいけない」が今年は無いらしい。理由はコロナとか、今年BPO(放送倫理・番組向上機構)が痛みを笑いの対象とするバラエティーを審議対象にすることを決定したことなど、いろいろ言われている。確かに、このあたりで一度立ち止まって「お笑い」について考える必要があるだろう。

 日本のお笑いは、本当に面白いものではない。①大声で叫ぶ、②つられ笑い、③テレビ局による持ち上げの3つで、今日の「笑い」というものが作られている。

 ①は、普通の音量で話したらおかしくもないことをキレたように大声で叫ぶのであるが、これは日本人のやさしさにつけこんだもので、もし笑わなかったらその場が気まずくなるのでそれを回避してあげようと、ほとんどの人は仕方がなく笑ってあげることになる。それをいいことに、キレ芸の芸人が次々と出てくる。このことに気づいた人は、ただの「うるさい人」にしかみえなくなるだろう。

 ②のつられ笑いは、バラエティ番組などで芸人による普通の会話にでもバックにテレビ局が笑い声を挿入して視聴者の笑いをさそったり、一緒に出演している芸人達がみんなでおおげさに笑い合ってやはり視聴者の笑いを誘ったりするやり方である。今のほとんどの笑いがこれだろう。ひどい時には、何かを食べて「めっちゃ、おいしい」と芸人が言っただけで、大笑いの声がバックに流れてくる。もう、なんでもありになっている。おかしくもないことに対して無理やり笑顔にさせられていると、ぐったりして虚しさを覚える。

 ③は、全くおもしろくない芸人でセンスも力もないのにテレビ局が「これでもか!」と繰り返し出演させて視聴者に「売れている芸人だ」「面白い芸人だ」と思わせ、笑わせる方法である。今で言うと個人的には「千鳥」などがそうではないかと思う。

 本当に面白くておかしいバラエティ番組がほとんどなくなってきた。お笑いの力がある人が出演しているのではなく、力のない大量の若手芸人達が出演して上の3つのやりかたでお笑い番組が作られている。この3つの方法で笑わせているために、おもしろくない芸人もどんどんテレビに出てこられる状況になっている。逆に言うと、普通の発言でもお笑いがやっていけるからいつまでたっても芸人達が向上しないし、本当に力のある面白い芸人達が育ち世に出てくる必要もなくなっている。以前は、上の3つの手口がなくても本当に笑ってしまう芸人達がお笑い番組に出ていたが、今は全く違う。ドリフターズやタモリ氏、紳助氏、さんま氏などは普通に見ていておかしかった。

 日本のお笑いを今のようにしてしまったのはもちろん芸人達ではなく、そのような番組作りをしているテレビ局であろう。スタッフの世代交代で、徐々に番組作りが安易に(手抜きで簡単につくってしまうように)なってきたように思う。