東日本大震災から10年の昨日、各テレビ局は被災者の本音や普段あまり報じられない実態を拾って放送していた。司会者たちのコメントも局から与えられた原稿ではなく、聞いている国民も納得できるような嘘のない自然の自分の思いを話し、とてもよかった。多くは10年目にふさわしい、よい番組作りをしていると思った。

 そんな中、TBSは中居君が出てきて歌の特別番組をやっていた。歌で被災者を勇気づけよう(?)というものらしい。歌が本当に苦しんでいる被災者にとって何らかのプラスになるのだろうか。自己満足の番組のように感じられた。「笑顔を届けよう」などというキャッチフレーズのもとにバカ騒ぎのお笑い特番が放送されなかったことは救いだ。

 10年間、被災地に寄り添って誠実に支援活動をおこなってきたサンドイッチマンのインタビューが、同じ日のネットニュースに掲載されていた。その中で、伊達氏は「東京で周りの皆さんたちは、「笑いで元気に」とおっしゃる。僕らも、その気になって現地に行って、コントとかやりに行ったのですが、やはり、そんな状況じゃないんです。誰も笑いを求めていない」と話す。お笑いや歌、演劇などのエンターテイメントは、テレビ番組同様に見ている時は確かに楽しいし嫌なことも忘れられる。しかし、それは見ている時だけであり、見終わるとつらい現実に戻ることになる。被災者がうれしいこと、求めていることは、家や仕事、地域のコニュニティなど、中~長期の安定であろう。

 物資を車に積み、テレビカメラを引き連れて得意げに被災地を訪れる芸能人もたくさんいるが、伊達氏は「例えば100人いらっしゃる所にお饅頭を80個買って行き「少し足りませんが、どうぞ召し上がってください」と渡すと「20人は食べられない。お持ち帰りください」と言われた」と言われ、現場を知らな過ぎたとも話す。

 長年にわたり真剣に支援活動をおこなってきたサンドイッチマンだからこそ、真実をついた重みのある言葉である。テレビ局や被災地を利用する芸能人たちは、彼らの言葉から多くを学んでもらいたい。