今日で10年になる。様々な悲しみが依然として残るが、大切なことは同じ悲劇をできるだけ繰り返さないように、過去から学びより良い未来を作るということであろう。
今でも私には2つの心配事がある。原発と津波に対する対応が本当に改善されているのかということだ。10年前と同じことが再び起きたことを想像し、決定的なことを防ぐ対策がとられたのだろうか。
1つは、気象庁が出す予想される津波の高さである。10年前は、一番初めに発表された津波の高さの予想は、千葉の外房が2m、岩手県と福島県が3mと非常に低いもので、この発表が多くの人々をその場から逃げないようにさせるという、決定的な打撃となった。この高さを聞いて、遠くまで逃げる人はいないだろう。しばらくしてから、訂正という形でどんどん予想される津波の高さが高くなっていったが、最初に1度予想を聞いた人はもう理解したので多くの人はテレビから離れて、連絡を取り合ったり様子を見に外に行ったりしたであろう。気象庁が、あの「大きな津波は来ない(2,3mの津波が来る)」という嘘さえ流さなければ、数百~数千人の命が急いで高台や海から遠くへ逃げて助かったのではないだろうか。津波が発生したのは天災であるが、これほど多くの人の命を奪ったのは人災によるものであろう。
2,3mと発表することは、「逃げるな」ということと同じである。だから、次に大きな地震が発生し津波が来そうな時には、「〇m」と具体的な数字を発表してはいけない。はずれたら、また数千人を殺すことになる。能力的、性能的に正確にすぐ発表するのができないのであれば、マグニチュード7以上で津波が来そうな時は、「大きな津波が来る可能性があります。すぐに高いところや遠くに避難してください」と放送しなければいけない。今はそのようになっているだろうか。
もう1つは、原発の電源喪失である。10年前、原発の電源が喪失したために、多くの帰宅困難地域をいくつも生み出し、東日本の土地を放射能で汚染させた。先月の地震でもすぐに多くの地域で停電が発生した。ちょっと大きな地震が来るとすぐに停電してしまう。10年前の教訓から、日本各地の原発は、電源喪失に対する安全な対策をとったのだろうか。電源車を高台に用意したとか自家発電機を設置したくらいでは到底だめだ。現実に震度7を想定し、その場がどうなるかを想像すればよい。電源車が供給場所に行くまでの道路がひび割れたり近くの建造物やがけが崩れて道をふさいだりして近づけない場合はどうするのか。自家発電機は免震構造物の中に作ったのか、発電機で作った電機が本当に届くのか(操作ミスが起きない操作構造になっているか、ケーブルは切断されないよう丈夫なもので覆っているのか)など、十分起こりえるすべてのことに対処できるようにしたのだろうか。鈍感な東電や国は想定することから逃げるし気が付かないことも多く、私には安全な対応策をとったとは到底思えないのである。私の想像では、10年前の規模の地震が来た場合、津波の高さの発表ではあたふたして二転三転して大混乱となり(しばらく発表できずそのうちに津波が来たりなど)、原発の電源はおそらく何らかの原因でバックアップが使えなくなり、同じことが繰り返されるように思う。
嘘の津波の予想高さと原発の電源喪失の2つは、万単位の命を奪い国土の半分を放射能で汚染させてしまう、絶対にやってはいけないことだ。政治家や官僚とは全く関係のない専門家などが(専門家による自発的なボランティアなどの方がよい)、大震災時の気象庁の発表の仕方と原発の電源確保について、早急に細かくチェックをしてもらいたい。
戦争は絶対に無くならない。歴史も何度でも繰り返される。人間とはかくも愚かなものだが、自分が生きているうちにとてつもなく大きな人災を2度経験することは非常に厳しいことである。